大友 肇(チェロ/クァルテット・エクセルシオ)

想像以上に音楽が膨らむ気がしていて楽しみです

クァルテット・エクセルシオ

 弦楽四重奏という、無駄のないと思われるアンサンブルをじっくりと味わいつつ、さらに何を加えると新しい地平が広がるのか、という試み。東京の紀尾井ホールで行われている「Quartet Plus」は、ひと晩でその可能性に出会えるコンサート・シリーズだ。その2回目には常設四重奏団として多彩な活動を行っているクァルテット・エクセルシオが登場。彼らのリクエストによってヴィオリストの柳瀬省太とチェリストの宮田大が加わり、四重奏と六重奏の名作が演奏される。
「エク(=エクセルシオ)はもう、互いに顔を見れば気持ちが分かるくらいの関係ですが、弦楽四重奏の経験がありアンサンブルに長けているお二人が加わることによって、今までにない“うまみ成分”がじわっと出てくるのではないかと思います。ゲストではありますが、互いに意見を出し合えて自由な発想を生み出せる方たちですし、常設であるエクの音に乗ってくれながらも、想像以上に音楽が膨らむような気もしていて、今から楽しみでしかたがありません」
 チェロ奏者でありリーダー的な存在である大友肇は、無理のない演奏でも音が隅々まで届くと確信している紀尾井ホールだからこそ、気負いすぎずに自然な形での演奏ができるという。
「ブラームスの室内楽曲はどれも完成度が高く、一音一音をしっかりと練った上で書いている音楽です。弦楽六重奏曲第1番は若い頃の作品だからか爽やかさや未来への希望もありますが、楽譜にはフォルテがとても多い。ですから奏者が油断をすると弾きすぎてしまい、コントロールできなくなる危険性もあるのです。そういった曲だからこそ、エクとしてずっと構築してきたバランスがアンサンブルの軸になり、作品が語るという演奏を実現できると思います。ゲストのお二人にはそれぞれ、第1ヴィオラおよび第1チェロのパートを弾いていただきますので、音楽をリードしながら刺激を与えていただく局面も生まれるはずです」
 コンサートの前半は、エクセルシオとして何度も演奏してきているシューベルトの「死と乙女」。
「決まったメンバーで何度も演奏すると曲づくりのスタイルも固定しがちですけれど、繰り返し演奏してきた曲だからこそ新しいことを試すことができますし、進歩や変化を感じられるはずです。後半に6人で演奏するブラームスとの対比も面白いですし、自分たちもこのコンサートで新しい課題が見つかるかもしれません」
 室内楽ファンを強く自認する方は、聴き逃せない一夜に注目を。
取材・文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ2017年12月号より)

Quartet Plus クァルテット・エクセルシオ+柳瀬省太&宮田 大
2018.1/18(木)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 
http://www.kioi-hall.or.jp/