
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とウィーン国立歌劇場のメンバーを中心に特別編成された室内オーケストラ「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン」。2026年はピアニストの阪田知樹が参加する。2000年にトヨタ自動車主催で始まり、昨年からトヨタグループ主催となり、今年で21回目。3月30日から4月9日にかけて全国7都市・8公演を開催するが、阪田はそのうち4公演でベートーヴェンの「ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲」を弾く。
「ウィーンは私にとって恩師パウル・バドゥラ=スコダ先生が住んでいた特別な街です。スコダ先生はウィーンの音楽の伝統を受け継ぐピアニストで、先生の自宅で勉強することも多かったので、ウィーン・フィルとウィーン国立歌劇場の方々と共演することは大変光栄で楽しみです。
トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーンは指揮者がいないオーケストラです。30人の少人数だからこそ、メンバーの自主性を重視した室内楽的な音楽づくりができます。ベートーヴェンの時代の規模のオーケストラを思い起こしながら聴いていただく貴重な機会にもなります」
ベートーヴェンの「三重協奏曲」では、ウィーン・フィルのコンサートマスターのフォルクハルト・シュトイデ、同ソロ・チェリストのペーテル・ソモダリとともに独奏パートを担う。
「この三重協奏曲を指揮者なしの編成で演奏するのは極めて稀です。室内オーケストラの中にソリスト3人によるピアノ三重奏のアンサンブルがあるというダブル室内楽みたいな編成は、指揮者がいないからこそより生きてくると思います。ピアノ協奏曲とは異なり、三重協奏曲はチェロのソロが活躍する場面が多くあり、弦が主体的な音楽のように私は感じます。ソリストが3人いるのは視覚的にも華やかです。ピアノは弦2人の対話を接続し、寄り添って弾くことが大事です。
ベートーヴェンには『運命』のような激しいイメージがありますが、実はカンタービレの歌う音楽を大切にした作曲家です。その意味で私は三重協奏曲の中でも特に第2楽章が好きです。この緩徐楽章でソリスト3人が、いかに歌うようなピアノ三重奏を奏でられるかが肝心だと考えています」
トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーンの公演では、ジャズのように各演奏家の個性が強まり、会場ごとに音楽づくりが異なるセッション的な楽しみも生まれる。形式を重んじつつも遊び心があるウィーンの伝統が生きる。
「三重協奏曲は室内楽的でありながらオーケストラ的でもある演奏を近くに感じる体験にもなります。後半はオーケストラがメンデルスゾーンの交響曲第4番『イタリア』を演奏します。これも指揮者なしで世界最高レベルのメンバーによる交響曲を聴くまたとない機会です」
阪田は2026年、デビュー15周年とリスト国際ピアノコンクール優勝から10周年を迎える。作曲家としても管弦楽曲2作品を初演する節目の年。トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーンとの共演を通じて旬の阪田を確かめたい。
取材・文:池上輝彦
(ぶらあぼ2026年3月号より)
トヨタ・マスター・プレイヤーズ, ウィーン
2026.3/30(月)~4/9(木) 札幌・仙台・東京・刈谷・名古屋・西宮・福岡
【阪田知樹 出演公演】
Program A「名手が織り成す対話と調和のベートーヴェン」
2026.3/30(月)19:00 サントリーホール(トヨタ・マスター・プレイヤーズ事務局03-5210-7555)
4/4(土)15:00 刈谷市総合文化センター アイリス(中日新聞コンサートデスク052-678-5323)
4/7(火)19:00 札幌コンサートホール Kitara(道新プレイガイド0570-00-3871)
4/8(水)19:00 アクロス福岡シンフォニーホール(西日本新聞イベントサービス092-711-5491)
https://www.toyota.co.jp/tomas/
※公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

池上輝彦 Teruhiko Ikegami
音楽ライター。日本経済新聞社シニアメディアプロデューサー兼日経広告研究所研究員。早稲田大学商学部卒。証券部・産業部記者を経て欧州総局フランクフルト支局長、文化部編集委員、映像報道部シニア・エディターを歴任。音楽報道記事やレビューを執筆。クラシック音楽専門誌での批評、CDライナーノーツ、公演プログラムノートも手掛ける。ヤマハ音楽情報サイト「音遊人」で「クラシック名曲ポップにシン・発見」、日経文化事業情報サイト「art NIKKEI」で「聴きたくなる音楽いい話」を連載中。
日本経済新聞社記者紹介 https://www.nikkei.com/journalists/19122304
ヤマハ音楽情報サイト「音遊人」 https://jp.yamaha.com/sp/myujin/
art NIKKEI「聴きたくなる音楽いい話」 https://art.nikkei.com/magazine-title/music-stories/

