高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 團 伊玖磨:オペラ《夕鶴》(演奏会形式)

記念すべき日におくる日本のオペラの最高峰


 2005年4月から始まった東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団のティアラこうとう定期演奏会は、この9月に50回目を迎える。記念すべき節目の演奏会のために常任指揮者の高関健が選んだのは、1952年の初演以来、国内外で800回以上の上演回数を誇る團伊玖磨作曲のオペラ《夕鶴》の全曲上演。日本人なら多くの人が知っているであろう「鶴の恩返し」の物語をもとに木下順二が戯曲を書き、それを團がオペラ化したこの作品は、わかりやすいストーリー、美しい日本語、そして格調高い音楽が一体となった日本語オペラの傑作だ。
 今回は演奏会形式で上演されるが、これは、オーケストラの演奏する音楽がしっかりと聴こえてくるという利点がある。愛に生きる「つうの主題」、心優しいけれど危うさを感じさせる「与ひょうの主題」、そして二人の関係に忍び寄る「物欲の主題」など、登場人物それぞれの心情を表現する様々な主題をじっくりと味わいたい。
 歌手陣は、新国立劇場での《夕鶴》上演における常連メンバーともいえる4人が登場。つうの腰越満美は、その美しい声と圧倒的な表現力で2016年の新国立劇場での公演でも絶賛されている。与ひょうの小原啓楼、運ずの谷友博、惣どの峰茂樹も同じく、各役を得意とするメンバー。ちなみに高関健は、11年に新国立劇場の公演でタクトを執っている。
 理想的なキャストを得て、東京シティ・フィルが奏でる「日本の美」の世界を存分に堪能したい。
文:室田尚子
(ぶらあぼ2017年9月号より)

第50回 ティアラこうとう定期演奏会
2017.9/30(土)14:00 ティアラこうとう
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
http://www.cityphil.jp/