円熟の名匠と話題のヴァイオリニストの共演
終身名誉指揮者として昨年、都響デビュー40周年を祝った小泉和裕。地方の古民家に居を構え、自然の温もりから育ってくるものを音楽へと注ぎ込む。円熟のタクトからは生気に溢れた音楽が流れ出し、今や小泉は都響だけでなく日本中のオーケストラから求められる名匠となっている。
芸術の秋、10月のB定期で小泉が取り上げるのはフランクの交響曲ニ短調。フランス19世紀後半の交響曲運動が生み出した傑作で、3楽章構成、楽章間を統一する循環主題の使用など当時フランスで流行したスタイルを踏まえているが、同時にオルガニストでドイツ系の血を引くフランクの個性を反映して、渋くがっちりとした音楽に仕上がっている。ここ1年ほどの都響との共演では、小泉はドイツものを軸にロシアもので色を添えるという路線を取ってきたが、その傾向を踏まえながらも少し違った風趣が楽しめそうだ。
前半はアリーナ・イヴラギモヴァをソリストに据えたバルトークのヴァイオリン協奏曲第2番。これまでの来日ではベートーヴェンやモーツァルトのソナタ全曲など大型プロジェクトを筋の通った解釈で聴かせ、多くのファンを魅了してきた。意外なことに今回が在京オーケストラ定期へのソロ・デビューとなる。バルトークの2番は民謡風テイストやロマンティックな管弦楽法が、無調に至るモダンな音楽語法と一体化している。以前は古典的な演目が多かった彼女だけに、小泉&都響との掛け合いに加え、このハイブリッドな音楽をどう攻めるかといったあたりにも注目したい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2017年9月号より)
第841回 定期演奏会Bシリーズ
2017.10/24(火)19:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057(ナビダイヤル)
http://www.tmso.or.jp/