名手たちの饗宴が彩る古都の秋
今年も「京都の秋 音楽祭」が京都コンサートホールを舞台に開催される。国内外で活躍する話題のアーティストたちや地元ゆかりの演奏家たちが集い、オーケストラから室内楽、ソロなど多彩な公演が並ぶ。期間は9月17日から11月26日まで。約2ヵ月にわたって開かれる全23公演から、注目の公演をいくつかご紹介したい。
まずは9月17日の開幕を飾る広上淳一指揮京都市交響楽団による「開会記念コンサート」。同団常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーとして京響に新たな黄金時代をもたらす広上が、すぎやまこういちの「序奏 MIYAKO」、ショパンのピアノ協奏曲第2番、ラフマニノフの交響曲第2番を指揮する。「序奏 MIYAKO」は昨年第20回を迎えた同音楽祭で世界初演された委嘱作。音楽祭のオープニングを華やかに飾る。ショパンではソロを務める俊英ルーカス・ゲニューシャスの鮮やかな技巧が聴きものだ。濃厚なロマンと壮麗なオーケストレーションが一体となったラフマニノフの交響曲では、京響のポテンシャルが最大限に発揮されることだろう。
アジアにフォーカスした公演も
広上と京響のコンビは11月5日の「京都市交響楽団 meets 珠玉の東アジア」でも聴くことができる。こちらは「東アジア文化都市2017京都」の一環として行われる日中韓共同コンサート。第1部ではチェ・ソンファンの管弦楽曲「アリラン」、リュー・ツェシャン(劉鉄山)とマオ・ユァン(茅源)による「瑶族舞曲」、そして外山雄三の「管弦楽のためのラプソディー」という日中韓の作品が演奏される。第2部はがらりと趣向を変えて、ビゼーの歌劇《カルメン》(演奏会形式)のダイジェスト版。バリトンの宮本益光が構成とナレーションを務め、カルメンを池田香織、ドン・ホセをユン・ビョンギル、エスカミーリョをジョン・ハオが歌い、「珠玉の東アジア」の題にふさわしく日中韓出身の一線級の歌手陣が揃う。
ルツェルン祝祭管&ロイヤル・コンセルトヘボウ管も登場
海外からは2つのオーケストラが招かれる。10月9日のルツェルン祝祭管弦楽団と11月18日のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団。ともに世界最高峰の楽団と呼んでいいだろう。
ルツェルン祝祭管弦楽団を指揮するのは音楽監督を務める巨匠リッカルド・シャイー。R.シュトラウスの3曲の交響詩、「ツァラトゥストラはかく語りき」「死と変容」「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」が演奏される。名手ぞろいのスーパー・オーケストラには格好のプログラムだ。精緻なアンサンブル、磨き抜かれた音色を存分に堪能したい。
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を率いるのは首席指揮者のダニエレ・ガッティ。こちらはハイドンのチェロ協奏曲第1番(独奏はタチアナ・ヴァシリエヴァ)とマーラーの交響曲第4番(ソプラノはユリア・クライター)を披露する。最高水準の響きの芸術を聴かせてくれるにちがいない。
アンサンブルホールムラタ(小ホール)で開催される室内楽とソロの公演にも魅力的なラインナップが並ぶ。9月20日はフルートの工藤重典とチェンバロのリチャード・シーゲルが共演。フランス・バロックとバッハ父子の名曲を奏でる。10月12日はチェロのマキシミリアン・ホルヌングとピアノの河村尚子によるデュオ。ブラームスの2曲のチェロ・ソナタを中心としたドイツ音楽プロが組まれた。11月16日はハンガリーのベテラン、デジュー・ラーンキがシューベルトのピアノ・ソナタ第21番他で円熟の境地を聴かせる。
百花繚乱のプログラムが京都の秋を彩る。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2017年8月号から)
2017.9/17(日)〜11/26(日) 京都コンサートホール 大ホール、アンサンブルホールムラタ
問:京都コンサートホール075-711-3231
http://www.kyotoconcerthall.org/