ウィーンの銘器で表現するシューベルト晩年の世界

シューベルトのスペシャリスト2人が奏でる連弾曲の中で特に注目したいのは、「人生の嵐 D947」と「大ロンド D951」。シューベルトの死の年である1828年に書かれた作品で、人生の苦悩のすべてを解き放つかのような前者と、苦難を乗り越えた境地にたどり着いたかのような後者で、シューベルト晩年の精神世界を表現する。
ソロでは、「12のドイツ舞曲」や「5つのエコセーズ」、「12のレントラー」など、演奏機会の多くない舞曲集が取り上げられる。誠実な姿勢で作品を探究する佐藤らしく、楽曲の魅力を浮き彫りにする音楽を聴かせてくれることだろう。
使用楽器は、ちょうどシューベルトが没した1828年に創業したウィーンの老舗ピアノメーカー、べーゼンドルファーのインペリアル。芳醇なウィンナー・トーンが紡ぐシューベルトの魅力を味わうことができそうだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ 2017年6月号から)
6/22(木)19:00 東京文化会館(小)
問:アスペン03-5467-0081
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