尾崎未空(ピアノ)

新星ピアニストが魅せる瑞々しい感性

 昨年、第40回ピティナ・ピアノコンペティション特級でグランプリを獲得し、歌心に溢れた演奏が話題を呼んだ尾崎未空。彼女は第11回エトリンゲン国際青少年ピアノコンクール(ドイツ)で第5位、第14回ルービンシュタイン国際ピアノコンクール(イスラエル)では最年少セミファイナリストに選ばれるなど、10代の頃から才能を認められてきたピアニストだ。今年3月にデビュー盤『MISORA』をリリースした尾崎が5月に記念リサイタルを開催する。
「今回のリサイタルはCDに収録した曲を中心にしながら、物語が感じられるようなプログラムにしました。特に後半のラストで弾くショパンの『ソナタ第3番』は作品58、今回のリサイタルのために新しく取り組んだ『3つのマズルカ』は作品59ですが、同じ時期に書いた全くタイプの違う作品を対比させることでショパンの世界を楽しんでいただけると思います」
 プログラムにはショパンと同じくポーランドの作曲家であるシマノフスキの「変奏曲」も含まれる。マズルカやワルツのスタイルも含み、ショパンの影響も感じさせる12の変奏は、超絶技巧が駆使された作品である。
「シマノフスキは中学3年くらいからステージで弾き続けてきました。彼の作品には独特の和声の味わいがあり、彼が生きた時代を反映するような混沌が感じられて魅力的な曲です。思い出も沢山あるのでCDにも収録しましたし、今回のリサイタルでもぜひ弾きたかったのです」
 これまでに一番多く弾いてきたのはリストとショパン。特にリストはコンクールで弾いた「《ドン・ジョヴァンニ》の回想」が高い評価を受けている。オペラや歌曲のトランスクリプション作品には積極的に取り組んできたというが、これにはピアノ以外の楽器とのアンサンブル経験が大きく影響している。
「大学に入ってから声楽の伴奏をすることが多くなり、自然とオペラや歌曲への興味が広がりました。最近は室内楽の演奏機会も増え、緊密なアンサンブルで音楽を作り上げる過程を体験しています。ソロを弾く際にも音色のイメージの幅がとても広がりました」
 これまでに多くの国際コンクールやマスタークラスを経験し、海外経験も豊かな尾崎は「いつかヨーロッパに住んでみたい」と語ってくれた。卒業後にヨーロッパの空気を体感しながら生活することも視野に入れつつ、更にレパートリーを拡大していきたいという彼女の“いま”とこれからへの期待が凝縮した今回のリサイタルに注目したい。
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ 2017年5月号から)

5/16(火)19:00 浜離宮朝日ホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp/

CD
『MISORA/尾崎未空』
キングレコード
KICC1357
¥3000+税