イヴリー・ギトリス(ヴァイオリン)

ヴァイオリン界の“レジェンド”健在!

 ギトリスが今年も日本に“帰ってくる”。日頃から日本への愛を隠さず、「日本に着くと、自分の家に帰ってきたような気が毎回する」というギトリス。今年はなんと95歳を迎えるが、演奏への意欲はますますみなぎっている。
 1922年生まれ、超絶技巧と個性的な歌いまわしで世界の第一線で長く活躍、19世紀の演奏様式をいまに伝える巨匠である。…などと説明するよりも、16年にメニューインが生まれ、以下、18年シェリング、19年ヌヴー、20年スターン、21年グリュミオー…と、同時期に生まれた大ヴァイオリニストたちの名前を挙げる方が、ギトリスが「伝説の巨匠」の時代に同じ次元で活躍した貴重な存在であることがわかるかもしれない。本公演にむけたコメントでも、こどもの頃に聴いたクライスラー、師匠でもあったティボー、エネスコ、そしてハイフェッツらが同時代人として登場し、「一人ひとりが独立した惑星のようなソリストたち」と表現しているが、当時から残った最後の巨星がギトリスその人である。
 今回の東京公演では、ピアノが久しぶりに代わり、世界的巨匠たちとのステージを重ねる名手イタマール・ゴランとの共演になるのも注目。ギトリスは「イタマールは彼が15歳の時から知っている。世界中の最高の音楽家たちと室内楽で共演する彼と音楽を作ったら…必ず何かが起こる」とのことで、前回とはまた違った演奏になりそう。今回はクライスラー「愛の悲しみ」、マスネ「タイスの瞑想曲」、チャイコフスキー「メロディ」といったプログラムが予定されている。
 日本へのメッセージは「“I love you”だよ!」とほほえむギトリス。その雄姿と唯一無二の至芸に魅了されるときがくる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ 2017年5月号から)

5/27(土)19:00 紀尾井ホール
問:テンポプリモ03-5810-7772
http://www.tempoprimo.co.jp/
他公演
5/23(火)高崎シティギャラリーコアホール(027-328-5050)