下野竜也(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

ドヴォルザーク「6番」メインのこだわりプロ

 これは楽しみな公演だ。高関健の常任指揮者就任から3年目に入った東京シティ・フィルは、定期演奏会で毎回高水準かつ聴衆の心に深く伝わる好演を継続している。6月定期に登場するのは高関の盟友・下野竜也。この4月からは広響の音楽総監督に就任し、名匠への道を歩み続けている。
 本公演は、メルヘンの世界で“家族の愛”が描かれるフンパーディンク《ヘンゼルとグレーテル》の前奏曲で柔らかに開始するが、次に来るのはワーグナー自身の生々しい“禁断の愛”を契機に作られた「ヴェーゼンドンク歌曲集」(ヘンツェ編)。下野らしい仕掛けで、その妖しくも美しい詩と音楽がどんな表情をまとうのだろう。歌はメゾソプラノの池田香織。昨年の東京二期会《トリスタンとイゾルデ》公演におけるイゾルデ役の絶唱が記憶に新しいが、同オペラと並行して書かれた関連深い歌曲集だけに、今回も深い歌唱が期待できる。なお、ワーグナーの晩年に助手をつとめていたのがフンパーディンクである。
 そしてメイン曲は、ドヴォルザークの交響曲第6番。下野はかねてから「特別に好きな曲」と公言しており、これまでも読響やN響等各地で取り上げて、その度に白熱の名演を繰り広げてきた得意中の得意演目。知名度は後の3曲に譲るものの、穏やかな美しさと雄大な広がりを持つ第6番のファンは意外と多い。下野がこの曲を振るからには、ファンは当然必聴。まだなじみがないという方もやはり必聴。終演時には好きなシンフォニーが1曲増えて帰ることになるはずだ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ 2017年5月号から)

第307回 定期演奏会
6/24(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp