紀尾井 明日への扉 16 岡本誠司(ヴァイオリン)

円熟味をも湛えた新タイプの俊才

 楽しみな若手ヴァイオリニストが、紀尾井ホールの「明日への扉」に登場する。名は岡本誠司。1994年に生まれ、今年3月に東京芸大を卒業する彼は、2014年ライプツィヒにおけるJ.S.バッハ国際コンクールのヴァイオリン部門で優勝。64年の歴史を誇るコンクールの同部門で、アジア人初の快挙を成し遂げた。さらに16年ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールで第2位を獲得。「独特な大物感」「柔軟な音楽性と表現力」などと評される彼は、優雅さや品格を湛えた、稀なタイプと思しき俊才だけに注目度が高い。
 今回のプログラムは、14年のコンクールと翌年のバッハ音楽祭の折に長期滞在した思い入れのある街=ライプツィヒゆかりの作曲家の作品集。大バッハの無伴奏曲に始まり、実力者・田村響のピアノで、C.P.E.バッハ、メンデルスゾーン、シューマン、グリーグ(同市に留学)のソナタ─しかも演奏機会の少ない曲が多い─を弾く内容にも、ひと味違った個性が表れている。発想力も豊かなその演奏に、ここでぜひ触れてみたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年4月号から)

5/24(水)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061
http://www.kioi-hall.or.jp/