現在のオーケストラ公演で、これほど面白いプログラムは稀だろう。2016年シーズンに創立70周年を迎えた東京交響楽団が、それに因んで「作品番号70」の3曲を取り上げる。しかも作曲者のチョイスが意外性十分だ。指揮は桂冠指揮者の秋山和慶。1964年に同楽団を指揮してデビュー後、40年にわたって音楽監督・常任指揮者を務めた、70周年記念に相応しい名匠であり、本プロは、隠れた名作の演奏実績も光る彼の真骨頂と言っていい。
まずは生演奏の稀なハイドンの交響曲第70番。この曲、実は第4楽章がフーガで書かれており、研究者ランドンが「同曲がなければ、モーツァルトの『ジュピター』のフィナーレは生まれなかった」と述べた重要作である。このほか「二重対位法のカノンの一種」と記された第2楽章など、ハイドンならではの妙味にこと欠かない。次いではフルート、クラリネット、ヴァイオリンという珍しいソロ楽器が興味をそそるクロンマーの協奏交響曲作品70。曲は、同時代のハイドン、モーツァルトばりの愉悦感溢れる音楽で、コンサートマスターの水谷晃、フルートの相澤政宏、クラリネットのエマニュエル・ヌヴー両首席奏者が並ぶ独奏陣も、70周年を祝うにこの上ない。そして唯一メジャー(?)なショスタコーヴィチの交響曲第9番作品70。1948年に上田仁指揮の同楽団が日本初演を行った(世界初演のわずか3年後!)記念すべき作品であり、「第九」的大作への期待に肩透かしを食わせた軽妙な音楽は、万人が愉しめること請け合いだ。
本公演は2度と体験できないこと必至ゆえ、ぜひとも足を運びたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2017年2月号から)
第96回 東京オペラシティシリーズ
3/5(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp/