現代舞踊の世界に大きな衝撃をもたらしたピナ・バウシュが亡くなってすでに7年になるが、その遺志を継いだヴッパタール舞踊団は精力的に活動を続けている。最近では、2014年に彩の国さいたま芸術劇場で『コンタクトホーフ』を上演したのが記憶に新しい。それから3年。今度は、こちらもバウシュの傑作『カーネーション』(1982年初演)を携えてやってくる。
この作品は、タイトルそのもののピンクのカーネーションが何千本も舞台に敷き詰められ、それだけでも壮観だ。バウシュが南米チリのアンデスの谷間で見たカーネーション畑の美しさに触発されて制作したものだそうだが、今から27年前の1989年に日本で上演された際は、国立劇場の舞台が鮮やかな花の絨毯に生まれ変わり、大きな反響を呼んだ。音楽は、ガーシュウィンの名曲「The Man I Love」やシューベルトの「死と乙女」など。花畑の上では、ダンサーたちがウサギのようにぴょんぴょん跳びはねたり、四季を表す仕草をしながらライン・ダンスを披露したり、皆で記念撮影のポーズをとったりと、観る者の心に次々に強烈なイメージを刻みつける。最後は、ダンサー自身の口から、なぜダンサーになったかが説明される。カーネーションの鮮烈な印象と共に、「愛」の可能性についても考えさせる作品である。今回は久々の貴重な上演なので、ぜひともバウシュの創造性の根源に触れてみたい。
文:渡辺真弓
(ぶらあぼ 2016年12月号から)
2017.3/16(木)〜3/19(日) 彩の国さいたま芸術劇場
12/3(土)発売
問:彩の国さいたま芸術劇場0570-064-939
http://www.saf.or.jp/