中村紘子 メモリアル・コンサート

多岐にわたる偉大な業績を讃えて

 世界的な演奏活動、軽妙かつ美しい言葉で綴る文筆活動、さらに若い才能を次々と発掘して育成した教育活動と、多方面から日本のピアノ界を発展させた中村紘子。演奏会や講演などが予定されていたが、今年の7月に惜しまれつつ逝去。
 彼女の偉大な功績を讃え、本来中村のリサイタルが予定されていた12月11日に、ゆかりの演奏家が集い、メモリアル・コンサートが開催される。出演は、幼い頃より中村にその才能を認められ、チャイコフスキー国際コンクールピアノ部門で日本人、また女性としても初めての第1位を獲得した上原彩子、中村が審査員を務めたショパン国際コンクールで歴代日本人として最年少入賞を果たした横山幸雄、中村が音楽監督を務めた浜松国際ピアノアカデミーでその才能を大いに認められ、いまや国際的ピアニストとなった河村尚子、常に第一線で活躍し続けるヴァイオリニスト漆原啓子、そして名実ともに日本を代表するチェリストである堤剛。
 プログラムは、亡くなったその日に楽譜が中村の自宅のピアノに置かれていたモーツァルトの「ピアノ・ソナタ K310」(演奏:上原)をはじめ、中村が生涯愛した作曲家であるショパンの作品からは、「ピアノ・ソナタ第2番」(演奏:横山)。そして河村、漆原、堤によって、故人を讃えるに相応しいチャイコフスキーのピアノ三重奏曲「偉大な芸術家の思い出に」。
 日本の音楽界を支え続けた中村から、彼女が愛した音楽家達へとバトンがつながれていく瞬間を見届けたい。
文:長井進之介
(ぶらあぼ 2016年11月号から)

12/11(日)14:00 サントリーホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp