武満が愛した曲と“フィルム・ミュージック”を集めて
没後20年を迎えた2016年、この秋も武満徹の作品が聴けるコンサートは多い。その武満作品にデビュー時から取り組み、多方向から光を当てて常に新鮮なアプローチを行ってきたのがギタリストの鈴木大介だ。
ギターのためのオリジナル曲や編曲はもちろんだが、とりわけ映画音楽へ深く切り込み、編曲・演奏してギタリストたちに広めた功績は大きい。最新の成果は秋に発売予定だというCDで披露されるが、10月には銀座のヤマハホールで、ジャンルを越えたミュージシャンとの共演によるコンサートを行う。
『武満徹へのオマージュ』と題されたコンサートは、ギターで弾く映画音楽からジャズ・クインテットによるMJQ(モダン・ジャズ・クァルテット)のナンバーまでが並び、天国の作曲者本人にも楽しんでもらえるような趣向だ。
「これまでにも『他人の顔』のワルツなどはコンサートで弾いてきましたが、残された映画音楽のオーケストラ・スコアを見せていただく機会があり、いろいろな発見がありました。特に『すべては薄明のなかで』や『森のなかで』といったギター曲と、作曲時期が近い映画音楽との関係が深く、似たフレーズが使われていることなどに気がついたのです。そうした発見から編曲や演奏に対する新しい方法論も生まれ、映画音楽におけるお仕事を見直さなくてはいけないという使命感が生まれました」
オリジナルのスコアを参照しながら編曲した映画音楽の数々、そして手の内に入っているであろう「森のなかで」やビートルズ・ナンバーの編曲などが演奏されるほか、生前の武満が好きだった音楽も加えられ、アットホームなコンサートになる予感も。
「映画が大好きだった武満さんが最後に観たという『シンドラーのリスト』や、病床で最後に聴いた曲らしいバッハの『マタイ受難曲』からのアリアなども演奏します。またジョン・ルイス(MJQ)の名曲『ジャンゴ』は、映画音楽にもジャズを取り入れ、とても丹念に楽譜を書いていた武満さんが大好きだったという1曲。ビッグバンドではなく室内楽のようなスタイルのジャズが理想だったんじゃないかと思い、プログラムに加えました。こういったエピソードが残されている曲ばかりですので、武満さんが好きだった音楽をみんなで聴いてみる。そんな会にしたいですね」
共演するのはバンドネオンの北村聡や、鈴木が「泣けるオトナのジャズ・ギターを演奏したら天下一品」と称賛する田口悌治ら4人のミュージシャンたち。まさに「ここでしか聴けない武満」を味わう一夜なのだ。
取材・文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ 2016年9月号から)
武満徹へのオマージュ 〜フィルム・ミュージックと彼が愛した音楽〜
10/18(火)19:00 ヤマハホール
問:ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171
http://www.yamahaginza.com/hall