“地中海の響き”が息づく天使のハーモニー
18世紀まで遡る伝統を継承し、1974年にレニエ3世から正式に任命されたモナコ少年合唱団。99年に父親の後任として音楽監督に就いたのが、今回インタビューに応えてくれたピエール・ドゥバ。合唱団はドゥバ親子のもとでレパートリーを広げ、世界各地でコンサートツアーを展開してきた。
「私自身も8歳から15歳まで本合唱団に所属し、音楽院を卒業した後は父のアシスタントに就いていました。音楽監督として最も大切にしていることは英国やドイツの合唱団にはない、あの“地中海の響き”とも呼ぶべき独自のサウンドを守ることですね」
メンバーは試験に合格した8歳以上の男子。ソプラノ、メゾソプラノ、アルトなどのパートに分かれ最大36名程で構成されている。
「選考の基準となるのは声の可能性、良い教育を受けているのも大きなポイントです。私としては、入団間もない者も含めて全ての少年たちがツアーに参加し、活動しながら学ぶのが望ましい。これまで地元のモンテカルロ歌劇場を始め世界中のオペラ・ハウスに出演し、様々な国のオーケストラやスター歌手との共演を果たしてきました。個人的にはイタリアのバス、ルッジェーロ・ライモンディとの共演がいちばん印象的です。彼は偉大なアーティストであるだけでなく人間的にもたいへん素晴らしかった」
今回のアジア・ツアーでも宗教曲やフランス歌曲、民謡に留まらず、映画音楽やシャンソン、ポップスまでバラエティに富んだ選曲が魅力のひとつ。
「レパートリーの多様性は重要です。レナード・バーンスタインの『音楽のゲットーにとどまるな!』という言葉を座右の銘に、たくさんの異なる音楽様式を開拓したい。それにできるだけオープンでいることもまた、少年たちの音楽教育の一環であると考えています」
奇しくも今年は初来日公演からちょうど30年目、モナコ公国と日本の外交樹立10周年となる節目だけに公演への期待は合唱ファンを中心に高まっている。
「過去に3回(1986年、89年、94年)コンサートツアーを行い、それぞれ1ヵ月ほど滞在しました。日本の聴衆は音楽芸術への理解度が高く、熱心だという印象をいつも受けております。ウィーン少年合唱団やトーマス教会少年合唱団など欧州の高名な団体がとても素晴らしい公演を成功させていますので、私たちにとっては大きなチャレンジですが、ベストを尽くせるよう今から練習に励んでおります。皆さんと会場でお会いできるのを心から楽しみにしています!」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年7月号から)
7/22(金)19:00 紀尾井ホール
問:ムジカキアラ03-6431-8186
http://www.billboard-cc.com
他公演
7/23(土)フィリアホール(ムジカキアラ03-6431-8186)