H・アール・カオス 新作公演 白河直子ソロダンス『エタニティ』

密な空間で“永遠”に触れる

白河直子 撮影:野波 浩/提供協力:Bacchus
白河直子
撮影:野波 浩/提供協力:Bacchus

 H・アール・カオスは、演出・振付家の大島早紀子とダンサーの白河直子によって1989年に始動。『春の祭典』『ボレロ』『カルミナ・ブラーナ』などの話題作を次々に繰り出し、壮大なビジョンを可視化する大島の天才的手腕と、ほとんど一身でそれを体現する白河直子の迫真のダンスで、舞踊界に衝撃を与えた。コアなダンス愛好家ばかりではなく、バレエやダンスとはなじみの薄い若者たちや、知識人と呼ばれる人々も、こぞって会場に足を運んだのだ。オーケストラや合唱隊との大がかりな共演が知られるが、活動はダンス公演に留まらず、ミュージカルやオペラの演出・振付でも高い評価を受けている。
 そのH・アール・カオスが6年ぶりに発表する新作が、白河直子ソロダンス『エタニティ』。永遠、無限の過去、来世、不滅など、多くの意味を含むタイトルは深遠だが、難解なだけの作品に終わらないことは、これまでの実績が物語っている。ダンスにすべてを注ぎ込み、その場で燃え尽きるかのような白河の動き、独特の存在感は、いちど観たら忘れられない。これまでにも代表作を上演してきた愛知県芸術劇場での上演、しかも今回は小ホールという密な空間で、間近に作品の息吹に触れられる。6年の時がもたらした深化はどのようなものか。深い思索と研ぎ澄まされた肉体は永遠とどう切り結ぶのか。まだカオスの世界に触れたことのない人も、ぜひ足を運んでほしい。
文:新藤弘子
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から) 

7/1(金)〜7/3(日) 愛知県芸術劇場(小)
問 愛知県芸術劇場052-971-5609 
http://www.aac.pref.aichi.jp