日本語訳で際立つ詩と音楽の美しさ
パリで学んだ“現代最強のギター・キッズ”のひとり、大萩康司。昨年メゾソプラノの林美智子との日本歌曲プログラムで始まったHakuju Hallでの『ギターと声』(全3回)の2回目は、波多野睦美を招いてのカステルヌオーヴォ=テデスコ作曲の「プラテーロとわたし」(全曲)。月のような銀色の毛を持つロバ「プラテーロ」の美しく悲しい物語は、ノーベル文学賞を受賞したフアン・ラモン・ヒメネスの同名詩集から編まれたギターと朗読とうたのための全28曲の作品だ。波多野自身による日本語訳による演奏。言葉を伴う音楽が常にそうであるように、日本語にすることで、原詩のスペイン語の響きが醸し出す「何か」が失われる危険が隣り合わせであるのは言うまでもないけれど、言葉に、そしてもちろん音楽に、研ぎ澄まされた繊細な感覚で耳をすませる波多野ならば安心。この曲が、日本語訳の朗読付きで全曲演奏される機会に巡りあうことは一生の間にそんなに多くないはず。貴重だ。
文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)
5/27(金)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
https://www.hakujuhall.jp