新星ヴァイオリニストが紡ぐ情感豊かな「四季」
1999年生まれの若きヴァイオリニスト、服部百音は、8歳でオーケストラと初共演し、数々のジュニア、シニア・コンクールを制覇。現在は、東京音楽大学附属高等学校特別特待奨学生として、またスイスのザハール・ブロン・アカデミーに在籍しながらヨーロッパ各地と日本で活発な演奏活動を展開している。
そんな彼女が、新春1月17日に紀尾井ホールで行われる東京ヴィヴァルディ合奏団のニューイヤーコンサートのゲストとして登場。ヴィヴァルディの「四季」で共演する。
「お話をいただいたときは、ウワーッすごい、ぜひ演奏したいとすごくうれしかったです。でも、半面、大丈夫かなあと(笑)。『四季』は初めての挑戦ですし、編成の大きいオーケストラとのコンチェルトともまったく違う。指揮者もいないですから、自分がリードしていかなくてはならない。ベテランの東京ヴィヴァルディ合奏団のみなさんとのコミュニケーション、音楽の一体化が一番の課題ですね」
服部百音は楽譜を深く読み込むとともに、YouTubeの映像などを見て、さまざまな角度から「四季」を研究している。
「アンネ=ゾフィー・ムターの弾く“夏”が大好きなんです。ものすごく速いテンポですが、情熱的ですばらしい。私は、“春”はとてもさわやかで小鳥のさえずりなどが聴こえる感じの曲ですから、繊細さとさわやかさを表現したいと思います。“夏”はイタリアのカラッとした暑さと嵐、けだるさなどを感じますので、情熱的でありながらもそれらを表現しながら奏でたい。“秋”は一番難しいと思います。いま、深みを出すためにはどうしたらいいか、いろいろ学んでいるところです。“冬”はガチガチ震える寒さを表し、以前4月のミラノで体感した雪の寒さを思い描いて弾いていきたい」
服部百音の演奏は、みずみずしく躍動感にあふれている。曲が進むにつれ、一気にギアチェンジするかのようにテンポが速くなり、フィナーレまで突っ走る場合が多い。
「自分ではごく自然に弾いているのですが、どうしても速くなってしまう。でも、今回は合奏団の方たちと一緒に音楽を作り上げていくわけですから、抑えます(笑)。ヴィヴァルディはとてもヴィルトゥオーゾ的なすばらしい曲をたくさん書いていて、この曲には弦楽器ならではの繊細で流麗で華やかな音色が詰まっていますので、それを表現したい。また、『四季』にはオペラ的な要素があるように感じるので、本当は着る物も変えられたら良いのですが、それは出来ませんので、どうすれば良いのか考えています」
新春を彩る華麗で情感豊かな「四季」は、愉悦の時間をもたらしてくれるに違いない。
取材・文:伊熊よし子
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年12月号から)
東京ヴィヴァルディ合奏団 2016年 ニューイヤーコンサート
第29回 新春は「四季」を聴きたい
2016.1/17(日)14:00 紀尾井ホール
問:東京ヴィヴァルディ合奏団03-6277-8450
http://vivaldi.jp