ヘンデル絶筆の大作をノーカット上演
バロック期を代表する巨匠作曲家、ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルの多様な作品を紹介し「メサイア」ばかりに偏った作曲家像を正してゆこうと、2003年にスタートしたヘンデル・フェスティバル・ジャパン(HFJ)。13回目となる今年は「晩年のヘンデル」をテーマに、実質的には最後の大作であるオラトリオ「イェフタ」(HWV70)全3幕を、演奏会形式でノーカット上演する。
1751年1月、66歳を目前にしたヘンデルは、新作オラトリオ「イェフタ」の作曲に着手。しかし、体調不良による中断もあり、完成したのは半年以上を経た8月末であった。旧約聖書の記述に基づいて、自らの戦勝と引き換えに愛娘の命を要求された軍師イェフタの苦悩を描き、「主の定めには、何人たりとも逆らえぬ」と知らしめる物語。ヘンデルは、この主題の意味を作曲中、身をもって知ることに。第2幕の最後に置かれた合唱曲の自筆スコアには、「左眼の視力減退で、これ以上、作曲することが叶わない」と記されている。
今回も、HFJ実行委員長で、ヘンデル研究の第一人者の三澤寿喜が指揮。イェフタを歌う辻裕久をはじめ、冨山みずえ(娘イフィス)、山下牧子(ヘイマー)、波多野睦美(妻ストルジェ)ら実力派声楽陣が顔を揃える。そして、古楽器によるキャノンズ・コンサート室内管弦楽団は、コンサートマスターの川久保洋子、首席チェロ奏者の懸田貴嗣ら、ヨーロッパの一線アンサンブルでも活躍する名手が集結。また、ステージに先立つ12月13日には、三澤がこの作品の聴きどころを解説する講演会も催される。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年12月号から)
2016.1/11(月・祝)15:30 浜離宮朝日ホール
問:アレグロミュージック03-5216-7131
※講演会などの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://handel-f-j.org