熟成のサウンドで届ける節目のコンサート
2015年の欧州ツアーを成功裏に終えた東京都交響楽団。この1月には第800回定期演奏会を迎え、終身名誉指揮者小泉和裕が節目の回を飾る。プログラムにはメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲とリヒャルト・シュトラウスの「家庭交響曲」の2曲が並んだ。
メンデルスゾーンでソロを務めるのはイザベル・ファウスト。ベルリン・フィルをはじめ世界中のトップレベルのオーケストラと共演する今もっとも多忙なヴァイオリニストのひとりである。イザベル・ファウストの特徴は、バロックから現代音楽まできわめて幅広いレパートリーを持ちながら、作品の時代様式を考慮した解釈を施したうえで、強靭な意志とリリシズムを感じさせる独自の音楽を生み出しているところだろう。古楽器アンサンブルとの共演も多い。メンデルスゾーンではどんな音楽を聴かせてくれるだろうか。
シュトラウスの「家庭交響曲」はなんといっても壮麗で色彩豊かなオーケストレーションが聴きもの。サクソフォン4本を含めた厚みのある4管編成のオーケストラを駆使して、シュトラウス一家の家庭の情景を描くという、実にシュトラウスらしい機知に富んだ趣向になっている。高い機能性を誇る都響ならではの精緻な演奏を期待したい。また、この曲は小泉和裕と都響がこれまでにたびたび演奏してきた得意のレパートリーでもある。05年の第600回定期でも演奏されている。それから10年を経た同コンビの熟成ぶりはいかに。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年1月号から)
第800回 定期演奏会 Aシリーズ
2016.1/12(火)19:00 東京文化会館
問:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp