グザヴィエ・ドゥ・メストレ(ハープ)

これは、美しい音楽の旅です

©Gregor Hohenberg/Sony Classical International
©Gregor Hohenberg/Sony Classical International

 繊細にして豪快。闊達にして優雅。ハープという楽器そのものの既成概念すら覆し、ウィーン・フィルのソロ奏者も務めたグザヴィエ・ドゥ・メストレ。新春の日本で、自身が「これは、美しい音楽の旅です」と語る、ハープ音楽の真髄とも言うべき色彩豊かなプログラムを披露する。
「私はハープを道具として見ています。つまり、私の感性を表現するにはハープが最高の方法だということです。舞台に立つときは、皆さんがハープに対して持たれている思い込みなどをすべて忘れて、同じ感情と感動的な音楽の旅を共にしてくれることを願っているのです」
 ハープと音楽を語る言葉には、微塵の迷いもない。
「ハープとの出逢いは、8才の時。(最初の師である)ヴァッシリア・ブリアノ先生に、恋をしたからです。そして、私は独立心が旺盛で、舞台上で演奏するのも好きですから、自分の資質にも合っていたのでしょう。世の人は女性が弾くものと思い込んでいるかもしれませんが、歴史的には素晴らしい男性奏者が何人もいたんですよ。そもそも、楽器の形は女性的だし、男性が抱いて弾く方が、しっくりするのでは…」
 今回のリサイタルでは、モーツァルトのピアノ・ソナタや、グリンカ、リスト、タレガ、デ・ファリャ、スメタナ、ドビュッシーなど多彩な編曲作品を中心に。
「新春なので、華やかで色彩が豊かなレパートリーを提案しました。ハープで表現が可能な、すべての色と雰囲気が披露できる“花火”のようなものを目指し、最近のアルバムでメインに置いた作品ばかりを選んだのです」
 特にドビュッシーは「自分の心に近く感じる作曲家」だと言い切る。
「私がフランス人だからかもしれませんが、その優雅さと純粋さに惹かれます。彼は深みのある厳格な音楽家でした。ルバートのやり過ぎのような安っぽい効果は避け、ラインの純粋さや形式の完璧さに焦点を当てるべきです。それには大変な集中力と内面的な強さが必要ですが、それが可能になれば、情感が際立つのです」
 そして、「私はとても幸運だと思います。ハープでは不可能だと考えられていたことを、成し遂げることができているのですから」と力を込める。
「ハープのレパートリーを増やすために、現代の作曲家にこの楽器のための作品を書いてほしいと願っています。ですから、来年8月にフィンランドの作曲家、カイヤ・サーリアホのハープ協奏曲をサントリーホールで世界初演(サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ)できることに、今から興奮が抑えられません」
取材・文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年12月号から)

2016.1/8(金)19:00 紀尾井ホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp