自由に攻めた演奏なのに、これこそが真正、“オーソドックス”なのではないかとさえ思わせてくれる。軽やかにしてニュアンス豊かなフォルテピアノ、のびやかな歌心とキレのある技巧が自在なガット弦でのヴァイオリン。両者ともこの楽器である必然性を示し、とにかく魅力的。どの曲も決定的快演だが、作品12の3曲(第1~3番)の各第1楽章の「アレグロ」に続く表記(「コン・ブリオ」「ヴィヴァーチェ」「コン・スピリート」)の違いが完璧に音化されていることに驚嘆。見事というほかない、世界的トップアーティストのデュオによる、ベートーヴェン・アルバム。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2026年7月号より)

【information】
SACD『ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第1集/アリー
ナ・イブラギモヴァ&セドリック・ティベルギアン』
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第1番~第3番、同第5番「春」
アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
セドリック・ティベルギアン(フォルテピアノ)
BIS/ナクソス・ジャパン
NYCX-10601 ¥3520(税込)
