イルジー・ビエロフラーヴェク(指揮)

伝統と高いクオリティを変えてはならないのです

©Václav Jirásek
©Václav Jirásek

プラハで生まれ育ったイルジー・ビエロフラーヴェクは、1990年にノイマンの後継者として44歳の若さで名門チェコ・フィルの首席指揮者になったものの、同フィル内部の理由により、92年に退任した。その後、プラハ・フィルを創設し、BBC交響楽団の首席指揮者を務めたりしたが、2012年に再びチェコ・フィルに首席指揮者として復帰。そんなマエストロにとってこの20年間のチェコ・フィルはどのように映っているのであろうか。
「チェコ・フィルはこの20年で大きな変化があったと思います。それは、世代交代がなされ、今、オーケストラを構成しているメンバーたちがとても若いということです。そしてその新しい世代のメンバーたちの質が素晴らしいのです。コントラバスに注目の若手がいて、ヴァイオリンにも優秀な若手が入りました。しかし同時に、中堅の優れた奏者もキープしておかなければなりません。彼らには、前の世代と次の世代の間で同じクオリティの音を伝えてもらいたい。ターリヒ、ノイマン、アンチェルなどの伝説的な指揮者たちが築き上げ、私たちが受け継いできた音のクオリティを変えてはならないのです」
今回、ビエロフラーヴェクとチェコ・フィルが演奏する作品は、ベートーヴェンとチャイコフスキーの交響曲第5番。来年70歳になる巨匠の円熟味と新世代が支えるチェコ・フィルのハイ・クオリティとが名作でどう融合するのか、聴きものだ。十八番のチェコ音楽では、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」や、スメタナの「わが祖国」から「モルダウ」や「シャールカ」が演奏される。そのほか、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ではダニール・トリフォノフ(10/31)が、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲では庄司紗矢香(10/28,11/3)が独奏を務める。
「トリフォノフさんは、プラハでの演奏を聴きました。素晴らしい才能の持ち主です。彼には、高度な技術だけでなく、楽曲のフィーリングをつかむ優れた感性が備わっています。庄司紗矢香さんと演奏するメンデルスゾーンは、このポピュラーな作品を、どのように料理すれば聴衆のみなさんに満足していただけるか、本気で工夫しなければならないという点に面白さを感じています」
ビエロフラーヴェクは、チェコ・フィルの将来についてこう述べた。
「今もすでに進行中の、この『伝統維持』と『相互理解による発展』が保てるのなら、チェコ・フィルの未来は明るいといえるでしょう」
取材・文:山田治生
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年10月号から)

イルジー・ビエロフラーヴェク(指揮) チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
10/28(水)19:00、10/31(土)18:00 サントリーホール
11/3(火・祝)14:00 横浜みなとみらいホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp


他公演
10/27(火)富山県民会館(076-432-3115)
10/29(木)福岡シンフォニーホール(092-725-9112)
11/1(日)愛知県芸術劇場コンサートホール(中京テレビ事業052-957-3333)
11/2(月)アクトシティ浜松(053-451-1114)
11/4(水)NHKホール(NHKプロモーション音楽祭係03-3468-7736)
※プログラムは公演により異なります。