ウィーンを拠点にするピアニストが1909年製ベーゼンドルファーで奏でるマーラー&シューマンのピアノ四重奏曲

左より:佐藤麻理 ©Sofija Palurovic/瀧村依里 ©Ayane Shindo/田原綾子 ©Taira Tairadate/築地杏里

 若手演奏家の登竜門としても知られる、TOPPANホールのランチタイムコンサート。そのスペシャル版として開催されるのが「1909年製ベーゼンドルファーの息吹 II」だ。

 2025年、TOPPANホールは1909年に作られたベーゼンドルファー・ピアノを迎え入れた。その丸みがかって、中音から低音へかけての柔らかな響きからは、かつての黄金期を思わせるウィーンの香りが漂ってくる。

 日本に来る前には、ウィーン国立歌劇場のバレエのリハーサル室で伴奏用ピアノとして使われていたという。それより前の来歴は不明だが、もしも以前からこの歌劇場のどこかで稼働し続けていたなら、リヒャルト・シュトラウスやワルターがリハーサルで弾いた可能性だってあったろう。この歌劇場で総監督を務めていたマーラーは、このピアノが作られてから2年後に死去している。

 このコンサートでは、そのマーラーの現存する唯一の室内楽曲、ピアノ四重奏曲断章が演奏される。若き情熱と繊細な表情が織りなす作曲家16歳の作品だ。そして、シューマンが作曲家として充実の時期に書いたピアノ四重奏曲変ホ長調。詩的かつ劇的な19世紀のロマン派の息吹がダイレクトに感じられる傑作だ。

 今回ピアノを弾くのは、ウィーンを拠点に活躍する佐藤麻理。ヴァイオリンは読響首席奏者の瀧村依里。ヴィオラの田原綾子やチェロの築地杏里も、TOPPANホールでの出演経験をもつ期待の若手奏者だ。ウィーンの香気を放つピアノに触発された気鋭の4人の奏者による馥郁たるアンサンブルを期待したい。

文:鈴木淳史

(ぶらあぼ2026年1月号より)

ランチタイムコンサート Vol.138 特別企画 1909年製ベーゼンドルファーの息吹 II
佐藤麻理(ピアノ)&瀧村依里(ヴァイオリン)&田原綾子(ヴィオラ)&築地杏里(チェロ)
2026.2/13(金)12:15 TOPPANホール
問:TOPPANホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com


鈴木淳史 Atsufumi Suzuki

雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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