ファイナリストINTERVIEW 進藤実優

10/1 ジャパン・アーツ

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高坂はる香のワルシャワ現地レポート 第8回

取材・文:高坂はる香

※ファイナル演奏後のコメント、結果発表後の合同インタビューからのまとめです

──4年前のショパンコンクールに続く再挑戦でしたが、この間に、ますます演奏から確信に満ちたものを感じるようになっていらした印象です。

 そうですか! それは、この4年でだんだん音楽に没頭することと冷静でいることのバランスが取れるようになったことが大きいかもしれません。4年前からアリエ・ヴァルディ先生のもとで学ぶようになったことで変わったのではないかと思います。先生は、いろいろなことを口厳しくおっしゃりながら、私をすごく支えてくださいました。

©Haruka Kosaka

ファイナル、「コンチェルトはリハーサルよりのびのび弾くことができた」と進藤さん。晩年の幻想ポロネーズと若き日のコンチェルトを続けて演奏するにあたっては「幻想ポロネーズのメランコリックとコンチェルトのメランコリックは描き分けたいと思っていた」とのこと。

──そのバランス感覚は、ヴァルディ先生の指導もありつつ、ステージでの経験も重ねるなかで手に入れられたのでしょうか?

 まだ完璧に手に入れたとは思っていませんが、やはり冷静に弾いたほうが自分のベストを高確率で出せると学んできたところはあります。自分の演奏を客観的に聴いているので、どういう演奏をしたかも大体覚えていられるようになりました。これはおそらく師匠のアドバイスのおかげかなと思います。

──弾いてる時の精神の作り方のアドバイスのような?

 そこについては良いといっていただいているのですが…そうですね、例えば演奏中に上を向くようにだとか、常に姿勢を伸ばすようにということをレッスンのなかで時々指摘してくださることで、毎回、「あぁ、今悪くなっていたんだ」と気付くことができます。

©Haruka Kosaka

同じくドイツに留学してピアノを学ぶお友達が応援にかけつけ、リハーサルなどを聴いて支えてくれていたそう。

──今回のショパンコンクールへの挑戦を通じて、ショパンについて新たに発見したことはありますか?

 前回に比べて比較的若い頃のレパートリーを多く取り入れたことで、華麗でブリリアントなショパンの側面、いわゆる少しパーティ的な若い感性に触れることができました。

 3次予選、ソナタを弾いたあとに「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」で演奏を閉じ、たくさんの拍手と温かい言葉をいただいたことは、私にとってとても良かったです。

©Haruka Kosaka

──では、今、ショパンは好きですか?

 好きですね…。

──どんなふうに好きですか?

 どんなふうに好きなんだろう…ピアノひとつで何でも表現できちゃうところが好きです!

──ショパンという人としては?

 気難しい人だと思うのですが、あのように亡くなる間際まで作品を書き続けたということは、やはりもっとずっと生きていたかったのかなと思うと、すごく人間味を感じますね。

©Wojciech Grzedzinski/NIFC

Chopin Competition
https://www.chopincompetition.pl/en


【Information】
第19回ショパン国際ピアノ・コンクール2025 優勝者リサイタル
2025.12/15(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
2025.12/16(火)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール

第19回ショパン国際ピアノ・コンクール 2025 入賞者ガラ・コンサート
2026.1/27(火)、1/28(水)18:00 東京芸術劇場 コンサートホール
2026.1/31(土)13:30 愛知県芸術劇場 コンサートホール

出演
第19回ショパン国際ピアノ・コンクール入賞者(複数名)、アンドレイ・ボレイコ(指揮)、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団

他公演
2026.1/22(木) 熊本県立劇場 コンサートホール(096-363-2233)
2026.1/23(金) 福岡シンフォニーホール(092-725-9112)
2026.1/24(土)大阪/ザ・シンフォニーホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)
2026.1/25(日) 京都コンサートホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)
2026.1/29(木) ミューザ川崎シンフォニーホール(神奈川芸術協会045-453-5080)


高坂はる香 Haruka Kosaka

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動。雑誌やCDブックレット、コンクール公式サイトやWeb媒体で記事を執筆。また、ポーランド、ロシア、アメリカなどで国際ピアノコンクールの現地取材を行い、ウェブサイトなどで現地レポートを配信している。
現在も定期的にインドを訪れ、西洋クラシック音楽とインドを結びつけたプロジェクトを計画中。
著書に「キンノヒマワリ ピアニスト中村紘子の記憶」(集英社刊)。
HP「ピアノの惑星ジャーナル」http://www.piano-planet.com/