
右:前田妃奈 ©Taira Tairadate
今年は日韓国交正常化60周年。これを記念して韓国国立交響楽団が10月に来日、東京と大阪でコンサートを開く。
同楽団は1985年に創設され、ソウル・アーツ・センターの専属楽団としてオペラやバレエも担う総合的なオーケストラへと発展した。2022年に韓国ではただ一つの国立オーケストラへと改称され、文化的発信力を強めている。
今回の来日では2024年にマルコ国際指揮者コンクールで優勝した韓国の新鋭、サミュエル・スンウォン・リーのタクトで、ブラームスとチャイコフスキーというロマン派の二大巨匠の重厚な名曲を並べた。リーは欧州を中心に数々の名門オーケストラと共演を重ね、明快な解釈としなやかな統率力で評価を高めている。韓国が誇るオケと新進気鋭の指揮者の競演が無料(要申込)で聴けるというから太っ腹だ。

前半、ブラームスのヴァイオリン協奏曲でソリストを務めるのは、日本の若手・前田妃奈。彼女は2022年のヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールで優勝し、一躍国際的な注目を浴びた。高い集中力と艶やかな音色で、ブラームスの重厚かつ広大な世界を余すところなく表現してくれるだろう。後半のチャイコフスキーの交響曲第5番は、暗い序奏に始まり、苦悩と葛藤を経て最終楽章の輝かしい勝利の行進に至る道のりを、「運命」の主題を縦糸にしてドラマティックに描く。
音楽は言語や国境を超えて人々を結びつける。韓国を代表するオケと日韓の若手の共演は、両国の協力関係とさらなる繁栄の象徴となってくれるはずだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2025年10月号より)
韓国国立交響楽団 ブラームス・チャイコフスキー 韓日国交正常化60周年記念音楽会
2025.10/2(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール(受付終了)
10/6(月)19:00 NHK大阪ホール
問:パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831
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