【CD】オリジン~チェロ独奏のための邦人作品集/上野通明

 パラグアイ生まれで幼少期をスペインで過ごした上野が、音楽に日本人としてのルーツを探った一枚。古謡「さくら」から明治大正期の歌、戦後に活躍した作曲家たちの創作を経て現代日本のリアルタイムへという流れを無伴奏で描き出す。冒頭の「BUNRAKU」(黛敏郎)から楽器がびんびんと震え、並々ならぬ気迫が感じられる。「エア」(武満徹)は原作はフルート独奏だが、チェロで演奏することで新たな一面が浮かびあがった。2022年作の「フェニックス」(森円花)は上野の桁外れの身体能力を引き出した作品だが、一音に込められた強烈さには日本武術の精神を聴き取ることもできるかもしれない。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2025年10月号より)

【information】
CD『オリジン~チェロ独奏のための邦人作品集/上野通明』

黛敏郎:BUNRAKU/武満徹:エア/日本古謡 さくら(上野通明編)/松村禎三:祈祷歌/山田耕筰(上野編):からたちの花/滝廉太郎(上野編):荒城の月/森円花:フェニックス

上野通明(チェロ)

La Dolce Volta/ナクソス・ジャパン
LDV140 ¥オープン価格