ワレリー・ゲルギエフ(指揮) 東京交響楽団 チェスキーナ洋子 メモリアルコンサート

音楽界のパトロネージュ精神を称えて


 2015年1月、音楽家の支援者として知られるチェスキーナ洋子氏が、82歳で世を去った。新聞等の訃報によって、改めてその功績の大きさを知ったという方も多いだろう。東京芸大ハープ科を卒業し、東京交響楽団のハープ奏者を経て、1960年に戦後初の公費留学生としてイタリアのヴェネツィア音楽院に留学。資産家であるレンツォ・チェスキーナ氏と結婚し、巨額の遺産を文化芸術活動の支援に費やした。ワレリー・ゲルギエフやロリン・マゼールといった名指揮者たちとの親交も深く、ロシア・マリインスキー劇場に隣接する新劇場やコンサートホールの建設、ニューヨーク・フィルの北朝鮮公演などにも多大な貢献を果たしている。
 そんなチェスキーナ洋子氏の功績を称えて、8月5日、ゲルギエフが東京交響楽団を指揮して、急遽メモリアルコンサートを開催することになった。故人ゆかりの楽団とマエストロの組合せは、メモリアルコンサートとしてこれ以上ないほどふさわしい。
 第1部としてゲルギエフらから追悼の言葉が述べられ、第2部ではチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」が演奏される。チャイコフスキーといえば、彼のパトロンだったメック夫人の経済的支援によって創作活動が支えられていたことが知られるが、チェスキーナ洋子氏もまた音楽の世界で大きな足跡を残した支援者であったことが偲ばれる。深い敬意と感謝の念がチャイコフスキーの音楽に込められることだろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年8月号から)

8/5(水)19:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp