
2014年から音楽監督を務める東響とのコンビも最終年に入った今シーズン、ジョナサン・ノットは、集大成に相応しいプログラムを展開している。その1つが7月のブリテン「戦争レクイエム」。この20世紀の深刻作を緊張感漂う中にも柔らかく表現し、「モダン音楽を古典のように演奏する」彼の本領を発揮した。その点で注目されるのが、9月の東京オペラシティシリーズ。古典のハイドン&モーツァルトとモダンなリゲティの作品が並ぶ本公演は、まさにノットならではのプログラムだ。
ハイドンは交響曲第83番。円熟の手腕が示された「パリ交響曲」の第2作で、「めんどり」の愛称でも知られている。モーツァルトは交響曲第41番「ジュピター」。18世紀の同分野の最高峰に位置する堂々たる傑作だ。まずは両古典だけでもノットの表現が注目される。
対するリゲティの最初はフルート、オーボエと管弦楽のための二重協奏曲。これはトーン・クラスター的な作品であり宇宙的な音楽でもある。ソリストは、フルートが竹山愛、オーボエが荒木良太と、最近東響首席となったフレッシュな顔ぶれ。超絶技巧も要する曲なので、二人の妙技に熱視線が注がれる。もう1つは「マカーブルの秘密」。オペラ・アリアに基づく歌に演技をまじえた小品で、23年3月都響公演におけるコパチンスカヤの怪演も記憶に新しい。今回はウィーン在住の気鋭ソプラノ・森野美咲の歌が興味津々。もちろん十八番リゲティにおけるノットの表現も大いに楽しみだ。そして古典とリゲティを併せて聴いてどんな感触を得られるか? ぜひとも生で体験したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2025年9月号より)
ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団
東京オペラシティシリーズ 第147回
2025.9/20(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
https://tokyosymphony.jp


