尾高忠明(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

円熟のマエストロが聴かせる2つのラスト・シンフォニー

 尾高忠明がチャイコフスキーとマーラー、2人の作曲家が完成した最後の交響曲をメインとする2種のプログラムで、東京フィルの定期を指揮する。
 この春まで尾高は、1998年より常任指揮者、ついで音楽監督として札幌交響楽団で充実の歳月を過ごしてきた。そして、この4月からは札響の名誉音楽監督に就任。今後は、様々なオーケストラで今まで以上に尾高の音楽作りを聴くことができるので、楽しみにしている方も多いだろう。
 チャイコフスキーの「悲愴」(7/12)は、最後にアダージョ〜アンダンテという遅い楽章がおかれ、詠嘆的に終るという異例の構成をもつ作品。マーラーはこの曲にヒントを得て、第9番(7/16,7/17)の終楽章にアダージョをおいたのではないかといわれている。緻密な構成力で知られる尾高が、ともに減衰して終わる2曲に、どのような関連性を聴かせてくれるかが聴きどころになるだろう。
 7月12日公演の前半には、《後宮からの逃走》序曲と「2台のピアノのための協奏曲」というモーツァルト青年時代の作品をとりあげる。協奏曲に登場する1998年生まれの若いカリン・K・ナガノは、指揮者ケント・ナガノとピアニストの児玉麻里夫妻の娘。児玉桃は麻里の妹なので、叔母と姪の共演ということになる。麻里と桃の姉妹デュオは息のあった共演ぶりでおなじみだが、今度は桃がリードする新たな組み合わせ。20歳前後の若きモーツァルトが、姉ナンネルと合奏するために書いたともいわれるこの協奏曲にふさわしい、清新で爽やかな演奏を期待したい。
文:山崎浩太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年6月号から)

第866回 オーチャード定期演奏会
7/12(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール
第95回 東京オペラシティ定期シリーズ
7/16(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第867回 サントリー定期シリーズ
7/17(金)19:00 サントリーホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522 
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