沖澤のどか(指揮)&ロラン・ペリー(演出)が登場! セイジ・オザワ 松本フェスティバル《夏の夜の夢》記者懇親会

 8月11日に開幕を控える2025セイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF)。オペラ公演、ブリテン《夏の夜の夢》のリハーサルも本格的にスタートした中、7月18日、同公演の記者懇親会が行われ、指揮を務める沖澤のどか(OMF首席客演指揮者)、ならびに演出のロラン・ペリーが登壇した。

 故・小澤征爾総監督からの指名を受け、昨年首席客演指揮者に就任した沖澤。本音楽祭へのデビューは22年の《フィガロの結婚》で、3年ぶりとなるサイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)によるオペラ公演で再び指揮を担うこととなった。

沖澤のどか Nodoka Okisawa
沖澤のどか

沖澤「《夏の夜の夢》はブリテンの有名な『青少年のための管弦楽入門』と同じく、パーセルの影響が随所に感じられる作品です。小規模のオーケストラにチェンバロとハープ2台が加わり、チェンバロ奏者はチェレスタも掛け持ちする…という独自の楽器編成で、唯一無二の響きを生み出します。

 そして、英国的なユーモアのセンス! 昨日、歌手との立ち稽古を行いまして、皆さん芸達者でアイディアも積極的に出してくださったのですが、演出をつける前でも音楽だけで喜劇的で、その感覚はドリフ的な昭和の日本のコメディや吉本新喜劇にも通ずるものがあると感じました。オペラに敷居の高さを感じている方でも楽しんでいただける作品だと思います。

 ロランさんの演出は、特別な仕掛けに頼らずともとにかく美しいし、何よりも音楽と一切の齟齬なくぴったりと合っている。これは言うのは簡単ですが、実際はなかなか実現しないことなので、その一点で本当に素晴らしいと思います。そして、この作品で重要な役割を果たすのが児童合唱。先週、松本まで子どもたちの稽古を見に行って、最初はシャイな感じでしたが(笑)、だんだんと積極的に取り組むようになってくれました。SKOも、《フィガロ》序曲の出だしを聴いた瞬間に度肝を抜かれたスーパーオーケストラ。ブリテンの音楽の機微を徹底的に表現してくれると思います」

2022年リールでの上演より

 欧州各国のオペラ・シーンにその名を轟かせるペリー。2022年の《フィガロ》でもローリー・フェルドマンとともに演出を務めていたが、コロナ禍のため来日は叶わず、3年越しに沖澤と顔をあわせての共同作業が実現することとなった。今回の《夏の夜の夢》のプロダクションは、22年にフランスのリール歌劇場で初演されている。

ロラン・ペリー Laurent Pelly
ロラン・ペリー

ペリー「2013年に(当時の)サイトウ・キネン・フェスティバル松本(SKF)で上演したプロダクション(ラヴェル《子どもと魔法》&《スペインの時》)は忘れられない思い出となっていますので、再び松本の地を訪れることができ、本当に嬉しく思っています。

 演出にあたって、私は常々『すべてを見せず、隠すことでお客さまに想像力を持って観てもらうこと』が大切だと考えています。このプロダクションでは、作品のタイトルにも含まれている“夢”、そして“夜・暗闇”をキーポイントとしました。自分が今見ている世界が現実か、それとも想像のものなのか、皆さまを『迷わせたい』。そのために、様々な種類の照明を使用するとともに、舞台そのものを鏡張りにして、登場人物が幾重にも見えたり、実際にその場所にいるのか反射なのかわからなくなるような遊びも盛り込みました。

 私はオペラの演出家として、常に“音楽の持つ魔法の力”に留意しています。この作品でも、シェイクスピアの原作で緻密に表現された詩的な情緒、深い愛やその根底にある欲望といったものをさらに高めている、ブリテンの音楽の力を引き出すことにこだわりたいと思います」

早くもスタートしている立ち稽古から。リハーサルに非常に長い時間をかけるのもOMFならでは。

 懇親会後に行われたリハーサル(立ち稽古)は一部が報道関係者に公開され、開始前には出席者に向けペリー自ら取り上げる場面について説明を行った。練習箇所を通した後、立ち位置や演技のタイミングが細やかに調整される中、沖澤とペリー、歌い手の三者で時間をかけて打ち合わせを行う場面も。

 初対面から数日という短い期間の中、「すごくフレキシブルで、歌い手一人ひとりをよく見ている」(沖澤→ペリー)「様々な音楽性やアイディアを持っていて、自分の演出にも積極的に取り入れていきたい」(ペリー→沖澤)とお互いの印象を語った二人。そのコラボレーションがさらに磨き上げられ、実を結ぶであろう松本での公演を心待ちにしたい。

写真・文:編集部


2025セイジ・オザワ 松本フェスティバル

2025.8/11(月・祝)〜9/9(火)
キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)、まつもと市民芸術館、松本市音楽文化ホール(ザ・ハーモニーホール) 他

●オペラ ブリテン:《夏の夜の夢》全3幕
8/17(日)15:00、8/20(水)17:00、8/24(日)15:00 まつもと市民芸術館・主ホール
●オーケストラ コンサート Aプログラム
8/23(土)15:00 キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)
●オーケストラ コンサート Bプログラム ─小澤征爾生誕90年を祝う─
8/30(土)、8/31(日)各日15:00 キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)

問:セイジ・オザワ 松本フェスティバル実行委員会0263-39-0001
https://www.ozawa-festival.com

※フェスティバルの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。