まず選曲がいい。お互いを尊敬していたショスタコーヴィチとブリテンに、ロストロポーヴィチとの関係も浮かぶ、20世紀チェロ作品集。そして自ら設定したコンセプトに全く捉われない演奏。「カッコいい!」と思った曲を、ひたすらにカッコよく弾く。特に難渋とされるショスタコーヴィチの第2協奏曲をそう感じてそう弾けるのは驚異的で、感動すら覚える。チェロ自体も深く重く鳴らすべき楽器ではなく、奏者のテンションを表現するための道具として完全に機能している。“ソヴィエト”“冷戦”“ロストロ”等の縛りから真に解放されたショスタコーヴィチがついに実現した。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年8月号より)
【information】
CD『ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第2番 他/シェク・カネー=メイソン』
ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第2番、チェロ・ソナタ/ブリテン:チェロ・ソナタ
シェク・カネー=メイソン(チェロ)
ジョン・ウィルソン(指揮)
シンフォニア・オブ・ロンドン
イサタ・カネー=メイソン(ピアノ)
ユニバーサル ミュージック
UCCD-45036 ¥3300(税込)

林 昌英 Masahide Hayashi
出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。



