高関健&東京シティ・フィルが魅せるショスタコーヴィチ最初と最後の交響曲

高関 健 ©K.Miura

 今年はショスタコーヴィチ没後50年のアニバーサリー・イヤー。ここ数年、国際情勢はきな臭さを増している。時代は巡るとはよく言ったもので、ソヴィエトという政治体制の制約の下で創作を続けたショスタコーヴィチが作品に残したメッセージは一層重みを増している。

 高関健は継続的にショスタコーヴィチの交響曲に取り組んでおり、常任指揮者を務める東京シティ・フィルの定期でも、2021年3月には第8番、23年3月には第7番といった大作に取り組み大きな成果を挙げた。今回は第1番と第15番、つまり真ん中から一転して最初と最後の交響曲を並べるという趣向だ。

 第1番は1925年、わずか18歳にしてレニングラード音楽院の卒業作品として作曲され、初演されるや否や国際的な反響を呼んだ、いわば出世作。形式こそ伝統的な4楽章制を取っているが、そこここにモダンでグロテスクな響きが聴かれる。天才の処女作にはその作家の全てが表れるという俗諺が当てはまる。

 第15番は1971年に作曲され、翌年初演された。表題性を持った第11・12番、声楽を伴う第13・14番から再び4楽章制、器楽のみの交響曲へと戻っている。いわば原点回帰だが、《ウィリアム・テル》序曲やワーグナーのオペラなど、伝統的な作品からの引用が散りばめられているだけでなく、12音技法的な処理やリズムの実験など、全体に謎めいたメッセージ性が感じられる。

 当日は高関によるプレトークも予定されているが、45年の時を経た二つの交響曲を合わせ鏡にすることで何が見えてくるのか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2025年3月号より)

高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第81回 ティアラこうとう定期演奏会
2025.4/12(土)15:00 ティアラこうとう
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp