日本のトップ奏者が、古巣のトップ楽団に久々登場!
サクソフォンの第一人者、須川展也が、「世界をリードする吹奏楽団」(須川)たる東京佼成ウインドオーケストラの4月の定期演奏会(大井剛史指揮)に、ソリストとして登場する。これは、2010年まで22年間コンサートマスターを務めた同楽団の定期に、卒団後初めて出演する大注目の公演。本人も「凄く楽しみ」と意気込む。
彼が吹く2曲から、まずは加藤昌則の「スロヴァキアン・ラプソディ」について。
「05年のスロヴァキア・フィルの日本ツアーでソリストを務めた際、加藤さんに書いていただいた協奏曲で、スロヴァキア民謡を使った楽しい曲です。オケの人たちも喜び、現地の定期にも呼ばれて演奏しました。またこの曲を広島交響楽団と演奏したときの指揮者が大井さん。そうした出会いの曲でもあり、最近になって吹奏楽版も出来たので、取り上げることにしました」
この曲、実は「おお牧場はみどり」の旋律も使われている。
「あれは意外にもスロヴァキア民謡らしいんですよ。ただ曲自体は、メドレー風の作りではなく、民謡を上手に使ったコラージュ的な作品。色々な音や複雑な音色変化が用いられ、オケの様々な楽器も活躍するなど、サウンド・デザインが素晴らしい。これは名作ですね。東欧系なので日本人の琴線に触れる旋律も多く、ビギナーもマニアも楽しめると思います」
もう1曲は、旭井翔一の「パガニーニ・リミックス」。
「旭井さんは、まだ20代の天才肌。この作品は、有名なパガニーニのカプリース第24番のテーマを使った曲ですが、“リミックス”ゆえに様々な要素を混ぜ合わせて新たな世界が作られます。内容的には“スタイル・バリエーション”で、ジャズ的な面もあり、チック・コリアなどのテイストに近い。ただソロはもの凄く難しく、『テクニックならお任せ』といった奏者向け。お客様は1曲目と全然違うタイプの音楽を楽しめます」
吹奏楽との協奏曲には、オーケストラやピアノの場合とは違った面白さもある。
「管楽器同士が混じり合った色彩感が魅力。またほとんど全員が一緒に呼吸するので、音楽が生き生きとしてきます」
本公演は、他も全て日本人作曲家のオリジナル曲という意欲的な構成だ。
「佼成ウインドが前を向いて芸術的な発信をしている姿勢を示したプログラム。行けば絶対に感動があるはずなので、一人でも多くの方に聴いてもらいたいですね」
彼は「サックスの1番の特長は、人声のように歌えるメロディ楽器であること。加えて新しい楽器ゆえに機能的で、インパクトの強い音、多彩な音が出せます」と語る。今回は「そうした“歌うソロ楽器”としての魅力がダイレクトに伝わるプログラム」。トップ楽団と共演するこの機会に、須川の名奏をぜひ味わって欲しい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年5月号から)
東京佼成ウインドオーケストラ 第123回定期演奏会
4/26(日)14:00 東京芸術劇場コンサートホール
問 東京佼成ウインドオーケストラ チケットサービス0120-692-556
http://www.tkwo.jp