飯森範親(指揮)

2015年、センチュリー響は新たな“挑戦”を始めます。

©山岸 伸
©山岸 伸

 2014年度から首席指揮者に就任した飯森範親のもと、日本センチュリー交響楽団は大きく変貌中。特に“挑戦”を活動テーマに掲げた2015年度の内容は清新な意欲に溢れている。
「従来のセンチュリー響のファン、いわゆるクラシック・ファン、一般の音楽ファンといったお客様に向けて、それぞれのニーズに合った公演や会員制度をご用意しました。クラシック・ファンにはセンチュリー響のファンになってもらい、一般の音楽ファンには、オーケストラ・サウンドの良さを感じることで、クラシック・ファンに、そして最終的にはセンチュリー響のファンになってもらえればなと思います」

幅広いクラシック・ファンの様々なニーズに応える

 まずセンチュリー響のファン向けの柱として、ザ・シンフォニーホールで行う「シンフォニー定期」公演がある。
「これまで年間10プログラムを木曜日に行ってきましたが、今度から8プログラムを金曜日・土曜日の2回ずつ計16公演としました。これまで以上にコンサートを聴ける機会を増やすことで、幅広いクラシック・ファンに来ていただける様にしたわけです。プログラムも多様化したニーズに応えるべく、色々な作曲家を入れ、カップリングも熟慮しました。また初日に聴いた人が2日目も聴きたくなるよう、時には1曲目の作品を変えていたりもしています」
 年4回いずみホールで開催する「いずみ定期」公演は、さらに画期的だ。
「104番まであるハイドンの交響曲を、全曲演奏(&録音)する『ハイドンマラソン』を用意しました。同一指揮者とオーケストラによる日本初の試みです。関連作曲家の協奏曲も含めて、センチュリー響のファンだけではなく、クラシック・ファンにも関心を持ってもらえるのではないかと。もちろん古典に取り組むことでオーケストラのスキルアップを図る狙いもあります」
 一般の音楽ファン向けには、超名曲やポップス等が並ぶ「四季コンサート」があるが、今後はさらにジャンルを超えたコラボも企画中だという。
 チケット面での配慮もきめが細かい。3種類の「定期個人会員」のほかに、自由な組み合わせで聴ける「クラブ会員」や会場で主に当日券を対象に限定販売する割引チケット(わか割、あと割、おか割)を新設する。
 そして「アーティスト・イン・レジデンス」に、ピアノの小山実稚恵が就任する。

アーティスト・イン・レジデンスとの密な関係

「協奏曲や室内楽など、1年を通して密な関係をもっていただきます。小山さんは、素晴らしい人柄で、女性らしい繊細さとダイナミックな表現力を兼ね備えた稀有の方。団員のステップアップのきっかけになればと考えています」
 これらの第一歩が、4月の第200回定期演奏会だ。
「『東洋の大地に根ざし、世界に向けて発信する』というコンセプトのもと、マーラーの『大地の歌』を選びました。ソリストは『W敬』(テノール:福井敬、バリトン:与那城敬)。私はすでに彼らと共演していますし、同曲の歌詞は男声の方が合います。そして小山さんが弾くシューマンの協奏曲があり、和田薫さんに委嘱した『ファンファーレ』が冒頭を飾ります。いわば“和・洋・中のバイキング”ですね」

5年後の30周年に向けて

 シェフ就任以来、手応えも充分感じている。
「音も空気もより明るくなり、演奏が物凄く自発的になっています。それに私も楽団員の自発性を活かすことができるリハーサルを行い、様々な形容詞を使って具体的なイメージを伝えるように心がけています」
 さらに彼は「目標は5年後の30周年にマーラーの『千人の交響曲』のような大曲をやること」と語る。話を聞けば聞くほど足を運びたくなるセンチュリー響の公演。今後大注目だ。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年2月号から)

日本センチュリー交響楽団 第200回 定期演奏会
4/10(金)19:00、4/11(土)15:00 ザ・シンフォニーホール
問 センチュリー・チケットサービス06-6868-0591
2015年シーズンの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.century-orchestra.jp