休日の午後、都の西で音が躍動する
指揮者、オーケストラ、ソリスト、会場…の4つが揃って注目される公演。
まずは指揮の井上道義。昨年10月に療養から復帰した彼を聴けること自体幸せだが、演目の「チャイコフスキー:三大バレエ・セレクション」が、期待度をより高める。3歳から15年間踊り(内7年間は本格的なバレエを習った)、一時はその道を目指した彼にとって、バレエ音楽は“肌に染みている”ジャンル。当然、持ち味の躍動感がMAXとなる。しかもその最高峰たる「眠りの森の美女」「白鳥の湖」「くるみ割り人形」の“井上道義ヴァージョン”は、以前3作をシャッフルして新しい組曲を作っているだけに、内容が実に楽しみだ。
そして都響の大容量で緻密なサウンドは、もはや外来一流にひけをとらないほど。カラフルでゴージャスなチャイコフスキーのバレエ音楽を、あの音で体感できるのは、これまた幸せというほかない。加えて、三大バレエをトップオケの演奏でまとめて聴く機会は、意外に貴重でもある。
ソリストの萩原麻未は、2010年ジュネーヴ国際コンクールのピアノ部門で日本人初優勝以来、雄弁かつ瑞々しい演奏で聴く者を魅了している。自分の言葉で音楽を語る日本人には稀な個性と相まって、ライヴは常に要マーク。特に今回のグリーグの協奏曲は、録音も出した得意曲ゆえに、自在の名奏が期待される。
会場は2011年に誕生したJR八王子駅直結のオリンパスホール八王子。東京の西側のほうがアクセスが便利な方々にとって、好立地な会場だ。日曜3時開演とあれば、こぞって足を運びたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年3月号から)
3/29(日)15:00 オリンパスホール八王子
問:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp