出口大地(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

稀有の俊才たちが民族的な音楽に生気を吹き込む

左:出口大地 ©上野隆文
右:服部百音 ©YUJI HORI

 東京フィルの10月定期は、出口大地の定期再登場に注目が集まる。2021年のハチャトゥリアン国際コンクール指揮部門で日本人初優勝を果たした出口は、22年7月に東京フィル定期のオール・ハチャトゥリアン・プロで日本デビュー。明解かつ生気に満ちた音楽を生み出し、大成功を収めた。以後読響や京響など日本各地の楽団へデビューし、海外でも実績をあげている。もう1つ、ヴァイオリンの服部百音のソロも大注目。数々の賞に輝く彼女は、N響などの著名楽団と共演を重ね、破格のテクニックと迫真的な表現で圧倒的なインパクトを与えている。

 プログラムには東欧〜西アジアの民族的な作品が並ぶ。1曲目、ハチャトゥリアンの「ヴァレンシアの寡婦」は、作曲者特有のアルメニア風味にスペインの香りを加えたメロディアスな音楽。まずはゆかりの深い作曲家における出口の真骨頂が発揮される。続くトルコの鬼才ファジル・サイのヴァイオリン協奏曲「ハーレムの千一夜」は、異才コパチンスカヤのために書かれた、エキゾティックかつモダンな作品。難技巧の独奏ヴァイオリンがシェエラザード役を演じながら、「アラビアンナイト」の世界が表現される。ここは、服部の冴えた技巧、そして作曲者サイのピアノと共演した経験が存分に生かされる。後半はコダーイの代表作「ガランタ舞曲」と「ハンガリー民謡『孔雀は飛んだ』による変奏曲」。ハンガリー情趣溢れる両曲では、出口が前回のハチャトゥリアンで魅せた土の香りと躍動感の再出が耳を弾ませる。なお、「ヴァレンシア〜」と「孔雀〜」は吹奏楽で大人気の作品。同分野のファンも原曲を生体験する貴重な機会となる。

 これは終始胸が躍るオーケストラ公演だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年9月号より)

第1006回 サントリー定期シリーズ
2024.10/17(木)19:00 サントリーホール
第165回 東京オペラシティ定期シリーズ
2024.10/18(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第1007回 オーチャード定期演奏会
2024.10/20(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522 
https://www.tpo.or.jp