初となるブルックナーは最愛の第9番
2023年秋に日本フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者に就任して以来、快進撃を続けるカーチュン・ウォン。就任1シーズン目から、マーラーの交響曲第3番、第9番やこだわりのガムラン・プログラムで音楽ファンの心を鷲掴みにしてきた。そんなカーチュンと日本フィルの2シーズン目は、ブルックナーの生誕200年を記念した交響曲第9番、一曲入魂のプログラムで幕を開ける。マーラーではすでに大きな成果をあげているカーチュンと日本フィルのコンビだが、両者がこの作曲家に取り組むのは今回が初めてとなる。
作曲家最後の交響曲にして未完の傑作、第9番は、カーチュンにとって最愛のブルックナー作品。この曲によってブルックナーの魅力に開眼し、その神聖さに心を揺さぶられてきたという。近年、第4楽章を含む補筆完成版での演奏も増えてきた第9番だが、今回は伝統的な3楽章版を演奏する。最新の音楽学的成果が詰め込まれたフィナーレの意義を認めつつも、アダージョの静けさを存分に堪能できる3楽章版での演奏には筆舌に尽くしがたい魅力があるとカーチュンは語っている。
カーチュンがこの秋、首席指揮者に就任するマンチェスターのハレ管弦楽団から、コンサートマスターのロベルト・ルイジが客演し、日本フィルとともにブルックナーを演奏する点も要注目である。マエストロが「コンサートマスターになるために生まれてきた音楽家」と高く評価するルイジが、日本フィルとどのような化学反応を起こすのか、大いに期待したい。
文:八木宏之
(ぶらあぼ2024年8月号より)
第763回 東京定期演奏会
2024.9/6(金)19:00、9/7(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://japanphil.or.jp