出口大地(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

共鳴する新世代の才能

左:出口大地 ©hiro.pberg_berlin
右:中野りな ©kisekimichiko

 世界で注目を集める若手演奏家が共演して、これまでも知られてきた魅力的なロシア音楽の新しい一面を教えてくれる。東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の第78回ティアラこうとう定期は期待の演奏会となる。指揮にハチャトゥリアン国際コンクールで日本人初の優勝を果たした出口大地、ヴァイオリンのソロに仙台国際音楽コンクールにおいて史上最年少で優勝を飾った中野りな(2004年生まれ)が登場。

 コンサートはまずハチャトゥリアンのバレエ音楽「スパルタクス」より〈ガディスの娘の踊り〜スパルタクスの勝利〉で始まるが、ここでは作曲家の名を冠するコンクール覇者である出口の意欲的な姿勢を感じ取ることができるだろう。続いて、あまりにも有名なチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲で、中野の実力をたっぷりと楽しむ。日本音楽コンクールでも仙台国際でも飛び抜けたテクニックでバルトークの2番を弾き切った中野は、その優れた技術、素晴らしい音色だけでなく、作品への鋭い切り込み、解釈の奥深さも特筆される。有名協奏曲だが、その中に潜んだ新しい魅力を、発見してくれるはずだ。

 最後にはショスタコーヴィチの交響曲第5番が控える。作品の書かれた背景について、何かと話題となる曲だが、ここでも出口の音楽的な解釈に注目したい。そして東京シティ・フィルと一体となった音楽作りによって、この傑作の魅力をさらに深めてくれるに違いない。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2024年7月号より)

第78回 ティアラこうとう定期演奏会
2024.9/21(土)15:00 ティアラこうとう
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp