ラフマニノフ生誕150年だった昨年、出色のピアノデュオ公演の記録。この作曲家をライフワークとする大嶺未来とロシアものに定評のある高橋多佳子が、デュオの一つの理想形とさえ思わせる演奏を実現。個人技やひらめきを強調してフォルムやバランスを崩すような場面は皆無。常設デュオのように精密にして自然体のアンサンブル、練り上げられた響き、きらめくような美音、柔和かつ豊潤なソノリティ。著名な第2組曲の安定感とグルーヴ感は見事だし、若書きの第1組曲の深淵と幻想性には陶然。ひたすらにラフマニノフに奉仕する名手たちの思いが、最高の形で結実。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年6月号より)
【information】
CD『ラフマニノフ:2台のピアノのための組曲第1番&第2番 他/大嶺未来&高橋多佳子』
ラフマニノフ:2台のピアノのための組曲第1番「幻想的絵画」、同第2番、前奏曲「鐘」(2台ピアノ版)/チャイコフスキー(ラフマニノフ編):バレエ音楽「眠れる森の美女」組曲
大嶺未来 高橋多佳子(以上ピアノ)
収録:2023年10月、東京文化会館(小)(ライブ)
妙音舎
MYCL-00051 ¥3300(税込)