クァルテット・エクセルシオが結成30周年を迎え、特別公演を開催

 3月21日、クァルテット・エクセルシオの結成30周年記者会見が都内で行われ、メンバーが現在の心境を語るとともに、アニバーサリーイヤーとなる2024-25シーズンの公演概要が発表された。

左より)西野ゆか、北見春菜、大友肇、吉田有紀子

 1994年、桐朋学園大学在学中の学生に結成されたクァルテット・エクセルシオ(通称「エク」)は、日本では数少ない常設の弦楽四重奏団で、現在、年間60公演以上を行っている。結成時からのメンバーであるヴァイオリンの西野ゆか、ヴィオラの吉田有紀子、チェロの大友肇の3人に、2019年に北見春菜(ヴァイオリン)が加わり現体制となった。
 2000年、イタリアのパオロ・ボルチアーニ国際弦楽四重奏コンクールで最高位に入賞するなど、国内外のコンクールで上位入賞多数。また、新日鉄音楽賞、ホテルオークラ音楽賞など、受賞歴も多い。2016年には「サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデン」でベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲演奏を、21年には全曲録音を日本人団体として初めて果たすなど、文字通り室内楽界を牽引する存在となっている。また、活動の基盤として認定NPO法人エク・プロジェクトを設立。主催公演の実施とともに、海外公演やアウトリーチ活動・現代曲の演奏にも力を入れている。

 この30年は「山あり谷ありだった」と振り返った西野。「みなさんの応援に押されながら活動してこられた」と感謝の思いを述べた。大友は、続いた秘訣を問われ、「何よりベートーヴェン、ハイドン、モーツァルトなどの魅力的な曲があるということ」と話し、「みんなが同じ目標をもっていた」ことを挙げた。吉田も「この人たちでなければ続いていなかった。険悪な雰囲気になることも多々ありましたが、良い部分も悪い部分もお互いに受け入れている。人間的にも興味深い人たち」と話した。サントリーホールの室内楽アカデミーでエクのメンバーに会った縁で参加する運びとなったという北見は、「またベートーヴェン・チクルスも弾きたいし、エクの活動をいろんな方々に伝えていきたい」と意欲をみせた。

 この分野では現在、カルテット・アマービレ、クァルテット・インテグラなど、若手グループの台頭が目覚ましいが、エクの後ろ姿を追ってきた彼らの活躍する姿を見て、4人も喜びを感じているという。

 「定期演奏会」「現代曲」「アウトリーチ」を3つの活動の柱に掲げる彼らだが、結成30周年となる2024-25シーズンは、通常の東京・京都・札幌での定期演奏会に加え、30周年記念特別公演も予定されている。
 6月と11月に計4公演が行われる定期演奏会では、モーツァルトの「ハイドン・セット」から第16番「狩」・第17番とベートーヴェン後期作品から第13番・第14番のカップリングに、初の試みとして委嘱新作をプログラムに組み込んだ。6月公演では、日本の現代音楽シーンには欠かせない作曲家・権代敦彦、11月公演では人気ゲームの音楽を手がける酒井省吾、と全くタイプの異なる2人へ委嘱。この日の会見にも両名が出席したが、弦楽四重奏曲を書くのはいずれも2作目となるという。すでに「空(ソラ)のその先」という作品を書き上げたという権代は、「ドレミファソラシドの“ソラ”がモチーフの核となった作品に、エクの音楽を聴きたいという願いを込めた」と新作を紹介。一方の酒井は「モーツァルトとベートーヴェンの間にはさまれるプレッシャーで精神的に平然としていられない」と笑わせ、エクの魅力を「見えないところでお互いに聴き合っていて、長年連れ添った夫婦のような円熟の味わい」と表現した。

左より)西野ゆか、北見春菜、酒井省吾、権代敦彦、吉田有紀子、大友肇

 〈結成30周年記念特別公演〉として実施されるのは2公演。9月の「音楽仲間と恩師を迎えて」は、エクの師匠であるチェロの山崎伸子らを迎えてのお祝いコンサート。翌10月の第2弾「日本民謡『八木節』〜幸松肇メモリアル〜」では、エクを応援していた故・幸松肇の代表作「弦楽四重奏のための日本民謡集」からの抜粋をとりあげ、追悼の機会とする。また、25年1〜2月に予定されているのが、モーツァルト「ハイドン・セット」のCD(ナミ・レコード)発売を記念した演奏会。クァルテットにとって重要なレパートリーである全6曲を2回に分けて、彼らがレジデンシーを置くJ:COM 浦安音楽ホールで披露する。

 もうひとつ、彼らの活動の中で重要な位置を占めるのが「ながらの春 室内楽の和 音楽祭」。大友が現在拠点とする千葉県長生郡長柄町でまもなく4月上旬から中旬にかけて開催される。自然豊かな土地で、エクの4人や仲間たちが集い、コンサートと室内楽セミナーを行う。コロナ禍を経て5年ぶりの開催となるが、将来的には海外からアーティストを招聘し、国際音楽祭に発展させたいというプランもあるそうだ。

 そのほか、20世紀作品を取り上げてきた「ラボ・エクセルシオ」シリーズでは、フィリップ・グラスの5曲の弦楽四重奏曲を一挙に演奏するなど、意欲的な取り組みも。第一生命ホールで続けている「クァルテット・ウィークエンド」シリーズでは、活躍めざましい、ほのカルテットとの共演も予定されている。

 バラエティに富んだ公演がズラリと並ぶエクの新シーズン。「お客様と30周年の喜びを分かち合いたい」(吉田)と語る彼らは、これからもフロントランナーとして、一歩先を見据えた企画をわれわれに届け続けてくれそうだ。

取材・文:編集部

〈定期演奏会2024〉
第17回 札幌定期演奏会

6/6(木)19:00 札幌コンサートホール Kitara(小)
第46回 東京定期演奏会
6/13(木)19:00 東京文化会館(小)
●曲目
モーツァルト:弦楽四重奏曲第17番「狩」
権代敦彦:委嘱新作
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番
プレトークゲスト/権代敦彦(作曲家)、渡部和(音楽ジャーナリスト)

第47回 東京定期演奏会
11/1(金)19:00 東京文化会館(小)
第20回京都定期演奏会
11/6(水)14:00 京都府立府民ホール アルティ
●曲目
モーツァルト:弦楽四重奏曲第16番
酒井省吾:委嘱新作
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番
プレトークゲスト/酒井省吾(作曲家)、勝村務(北星学園大学経済学部教授、11/1のみ)、小室敬幸(音楽ライター、11/6のみ)

問:ミリオンコンサート協会03-3501-5638
http://www.millionconcert.co.jp
エラート音楽事務所075-751-0617(11/6のみ)
https://erato.jp

〈結成30周年記念特別公演〉
クァルテット・エクセルシオ 結成30周年特別演奏会(1)
〜音楽仲間と恩師を迎えて〜

2024.9/27(金)19:00 Hakuju Hall
●曲目
ハイドリッヒ:ハッピーバースデイ変奏曲
ドヴォルザーク:弦楽五重奏曲第3番
チャイコフスキー:弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」
共演/柳瀬省太(ヴィオラ)、山崎伸子(チェロ)

クァルテット・エクセルシオ 結成30周年記念演奏会(2)
日本民謡「八木節」〜幸松肇メモリアル〜

10/24(木)13:30 ルーテル市ヶ谷
●曲目
幸松肇:
弦楽四重奏曲のための日本民謡集より
弦楽四重奏のための「賛歌」
コダーイ:弦楽四重奏曲第2番
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番より第2楽章

問:ミリオンコンサート協会03-3501-5638
http://www.millionconcert.co.jp

クァルテット・エクセルシオ 結成30周年記念CD「ハイドン・セット」発売記念コンサート
【vol.1】2025.1/31(金) 【vol.2】 2/20(木) 各日19:00 J:COM浦安音楽ホール
●曲目
【vol.1】
モーツァルト:
弦楽四重奏曲第14番「春」
弦楽四重奏曲第15番
弦楽四重奏曲第16番
【vol.2】
弦楽四重奏曲第17番「狩」
弦楽四重奏曲第18番
弦楽四重奏曲第19番「不協和音」

問:ミリオンコンサート協会03-3501-5638
http://www.millionconcert.co.jp

〈共催公演〉
サルビアホール クァルテット・シリーズ
シーズン58「ラボ・エクセルシオ」

2024.10/7(月)19:00 鶴見区民文化センター サルビアホール 音楽ホール
●曲目
フィリップ・グラス:
弦楽四重奏曲第1番
弦楽四重奏曲第2番「カンパニー」
弦楽四重奏曲第3番「ミシマ」
弦楽四重奏曲第4番「バツァク」
弦楽四重奏曲第5番
プレトークゲスト/谷口昭弘(音楽学・音楽評論)、渡部和(音楽ジャーナリスト)

問:サルビアホール045-511-5711
https://salvia.hall-info.jp

クァルテット・ウィークエンド 2024-2025
クァルテット・エクセルシオ × ほのカルテット

2025.3/1(土)14:00 第一生命ホール
●曲目
エネスコ:弦楽八重奏曲 ほか
共演:ほのカルテット

問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 
http://www.triton-arts.net

〈ながらの春 室内楽の和 音楽祭2024〉
2024.4/5(金)、4/7(日) 各日14:00 ミルフィーユゴルフクラブ(千葉県長生郡長柄町)
●曲目
【4/5公演】
シューベルト:
弦楽四重奏曲第12番「断章」
弦楽五重奏曲
アレンスキー:弦楽四重奏曲第2番
共演/杉田一芳(チェロ)
【4/7公演】
モーツァルト:フルート四重奏曲第3番
ロッシーニ:チェロとコントラバスのための二重奏曲
ヴォルフ:イタリアン・セレナーデ
ドヴォルザーク:弦楽五重奏曲第2番
共演/山野雅美(フルート)、山崎実(コントラバス)
問:ゴーシュ音楽院0475-36-3774
https://www.gauche-music.com

室内楽セミナー合宿
4/10(水)〜4/13(土)
長柄町都市農村交流センター“わくわくながら”
問:ゴーシュ音楽院内 ながらの春室内楽の和音楽祭 事務局 室内楽セミナー係0475-36-3774

https://www.gauche-music.com/nagaranoharu2024