In memoriam ペーテル・エトヴェシュ

Eötvös Péter 1944-2024

 現代の作曲界を代表する一人で、指揮者としても活躍したペーテル・エトヴェシュが3月24日、ブダペストで亡くなった。80歳だった。

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 1944年、当時ハンガリー領だったルーマニア・トランシルヴァニア地方に生まれ、幼少期から作曲を始める。ブダペスト音楽院で作曲を、ケルン音楽大学では指揮を学んだ。20世紀を代表する作曲家、カールハインツ・シュトックハウゼンに影響を受け、彼のアンサンブルと定期的に共演を重ね、71年からはケルンの西ドイツ放送電子音楽スタジオでも活動した。
 1978年、ピエール・ブーレーズに招かれ、IRCAM(フランス国立音響音楽研究所)の開設記念コンサートを指揮。その後、彼の後を継ぎアンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督を務めた。

 作曲家としては、電子音や民俗音楽などの様々な音楽的要素を融合させた作風が特徴で、特に1990年代以降は「声楽と管弦楽のための《アトランティス》」(1995)、オペラ《三人姉妹》(1997)などの大規模作品の成功により、世界的な名声を確立。
 2021年にはベルリン州立歌劇場でオペラ《スリープレス》を自らの指揮で初演、ドイツのオペラ雑誌『オペルンヴェルト』の「世界初演オブ・ザ・イヤー」に選ばれていた。

 指揮者としては、1980年にBBCプロムスでデビュー以降、ブダペスト祝祭管、シュトゥットガルト放送響、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、ベルリン・フィル、ミュンヘン・フィル、ロンドン・フィル、ウィーン・フィル、クリーヴランド管、ロサンゼルス・フィル、N響などと共演。

 教育者としては、カールスルーエ音楽大学、ケルン音楽大学の教授を務めただけでなく、1991年に「国際エトヴェシュ・インスティテュート」(ブダペスト)を、2004年には「ペーテル・エトヴェシュ現代音楽財団」を設立。若い作曲家と指揮者のためのマスタークラスやワークショップを世界各地で行った。

 日本では、1970年、大阪万博にシュトックハウゼン・アンサンブルのメンバーとして出演。同年に自決した三島由紀夫に触発され、73年に《ハラキリ》(2014年に能声楽家・青木涼子らによって日本初演)を作曲している。日本文化への関心は高く、2019年には青木のために書き下ろした幕末を舞台としたメロドラマ《くちづけ》(演出:平田オリザ)を発表。日本ほかで初演された。また、14年には東京オペラシティの「コンポージアム」テーマ作曲家に選ばれ、5作品を自らの指揮で演奏し、武満徹作曲賞の審査員も務めた。

 5月に行われるN響の現代音楽コンサート「Music Tomorrow 2024」では、マレーヴィチの抽象絵画を題材にした「マレーヴィチを読む」、N響やフランス放送フィルなどの共同委嘱による「ハープ協奏曲」(2023)が日本初演される予定。