シプリアン・カツァリス ピアノリサイタル ~ラフマニノフへのオマージュ~

偉大なるコンポーザー・ピアニストに敬意をこめて

(c)Carole Bellaïche

 “鍵盤の魔術師”の異名を取るシプリアン・カツァリスが、昨年に引き続き来日公演を行う。カツァリスといえば超絶技巧を要するトランスクリプション(編曲版)の演奏活動で異彩を放ち続けている。昨年のリサイタルではサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」第2楽章のピアノ独奏版を披露。今年に入りリリースしたアルバムも、モーツァルトの歌劇《ドン・ジョヴァンニ》ピアノ版全曲(ビゼー編)である。

 ついにオペラ全曲まで手がけるようになったカツァリスであるが、今年のリサイタル・テーマに選んだのは生誕150年、没後80年のラフマニノフだ。題して「ラフマニノフへのオマージュ」。たんに“オール・ラフマニノフ・プロ”としないのがカツァリス流とでもいおうか。明かされている曲目によれば、冒頭はシューベルトの「即興曲集より」となっている。シューベルトには即興曲集が2作あるが(D899とD935)、流麗で歌心に富む曲を選ぶのか、変奏曲形式を選ぶのか、彼が「ラフマニノフへのオマージュ」としてチョイスする曲にも注目だ。

 ラフマニノフ作品は、5曲からなる「幻想小品集」である。かの有名な前奏曲〈鐘〉や、愛らしい〈メロディ〉の入った若き日のラフマニノフの所産である。カツァリス自身によるロマンティックな小品「さよならラフマニノフ」は、まさにオマージュにふさわしい作品だ。パリ・デビューから57年、72歳のカツァリスが奏でる芳しい音色で堪能したい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2023年12月号より)

2023.11/30(木)19:00 浜離宮朝日ホール
問:LEGARE 0467-91-0496 
https://www.legare-music.info

他公演 
2023.12/2(土) かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール(03-5670-2233)
12/3(日) 大阪/ザ・カレッジ・オペラハウス(おふぃすベガ0798-53-4556)
12/9(土) 福岡/FFGホール(エムアンドエム092-751-8257)