ボローニャ歌劇場《トスカ》《ノルマ》

輝きを増したイタリアの名門が理想的なキャストとともに来日

上段左より:オクサーナ・リーニフ (c)Oleh Pavliuchenkov/マリア・ホセ・シーリ (c)Michele Monasta/マリア・グレギーナ (c)Petra Stadler
下段左より:ファブリツィオ・マリア・カルミナーティ/フランチェスカ・ドット/脇園 彩 (c)Studio Amati Bacciardi

 コロナ禍で途絶えていた海外歌劇場の引っ越し公演が再開し、本物に触れることの大切さを痛感している。欲をいえば、その歌劇場が最高に輝いているときに来日してほしいが、ボローニャ歌劇場公演ではその願いが叶う。昨年、ウクライナ出身のオクサーナ・リーニフが音楽監督に就任し、オーケストラの水準が一段、また一段と上がっている。女性で初めてバイロイト音楽祭の指揮台に立つなど、台頭著しい女性指揮者のなかでも圧倒的に注目されるリーニフを得て、飛躍のさなかに来日するのだ。

 プッチーニの《トスカ》はリーニフ自身が棒を振る。彼女が指揮するオペラをボローニャで聴いたが、ニュアンスが濃密でドラマの運びが生命力に富み、すべての音が立っていた。オーケストラファンも期待してほしい。歌手もトスカの代名詞、マリア・ホセ・シーリとマリア・グレギーナのダブルキャストで、カヴァラドッシにマルセロ・アルバレスなど理想的だ。

 ベルカントを知り尽くしたファブリツィオ・マリア・カルミナーティ指揮のベッリーニ《ノルマ》もすごい。以前、ローマ歌劇場日本公演《椿姫》で喝采を浴びたフランチェスカ・ドットは、エレガントで情感豊かなノルマを歌い、「私の声にはヴィオレッタよりノルマが合う」と言い切る。アダルジーザは欧州で活躍する日本人歌手の星で新国立劇場でもおなじみの脇園彩。この役は「世界で一番勉強した」そうで、ボローニャで聴いた際も大喝采を浴びた。ドットとの声の相性も抜群。ラモン・バルガスが演じるポッリオーネも加わり、キャストは申し分ない。

 ボローニャ歌劇場はすごかったね、と語り草になる日は近い。
文:香原斗志
(ぶらあぼ2023年11月号より)

《トスカ》 
2023.11/2(木)18:30、11/4(土)15:00 東京文化会館
11/7(火)18:30 高崎芸術劇場
11/12(日)15:00 大阪/フェスティバルホール
《ノルマ》 
2023.11/3(金・祝)、11/5(日)各日15:00 東京文化会館
11/11(土)15:00 びわ湖ホール
問:コンサート・ドアーズ03-3544-4577(11/12以外)
  キョードーインフォメーション0570-200-888(11/12のみ)
https://concertdoors.com
※配役などの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。