コンスタンチン・シェルバコフ ピアノリサイタル
~The Best of Rachmaninoff~

親密な空間で感じるロシア・ピアニズムの系譜

(c)Jen-Pin

 ロシア生まれの名ピアニスト、コンスタンチン・シェルバコフ。モスクワ音楽院でレフ・ナウモフに学んだロシアン・ピアニズムの継承者で、長らく教鞭をとるチューリヒ芸術大学の門下からは、2010年ショパン・コンクールの優勝者、ユリアンナ・アヴデーエワを輩出している。今年60歳を迎え、音楽がますます円熟している頃だ。

 そんなシェルバコフが今回取り上げるのは、オール・ラフマニノフ・プログラム。第1回ラフマニノフ・コンクールの覇者でもある彼のラフマニノフは、若き日に生前のリヒテルから高く評価されたことも知られている。作曲家の生誕150年に、そんな得意のレパートリーを披露してくれる形だ。

 強靭かつしなやかなタッチ、スパイスの効いた和音の味を際立たせる特別な音楽づくりが印象的なピアニスト。そんな彼がラフマニノフを弾いたら、刺激的かつ壮大なスケールで圧倒してくれることは、想像に難くない。それも、「幻想的小品集」op.3より〈鐘〉というマスターピースにはじまり、「10の前奏曲」op.23や「13の前奏曲」op.32、練習曲集「音の絵」op.33、op.39などから小品を組み合わせた、趣向をこらしたプログラム。このセレクト、曲順で聴くからこそのラフマニノフの音のマジックを味わわせてくれるだろう。

 シェルバコフのパンチのある音の魅力を存分に体験するなら、やはり良いホールで生音を聴くのが一番。今回の来日公演も、ぜひ足を運んでおきたい。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2023年10月号より)

2023.11/13(月)19:00 浜離宮朝日ホール
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/