コロナ禍での危機を救ったヒーローが待望の再登場!
コロナ禍による入国制限で海外の演奏家がほぼ来日できなくなってしまった頃、ジョン・アクセルロッドが代役として日本のオーケストラで大活躍をくりひろげたのは記憶に新しいところ。入国制限の直前に来日していたことから、出国せずにそのまま日本に留まり、3ヵ月にわたり全国各地のオーケストラを指揮した。そのなかには2021年12月と翌年2月に指揮した都響の公演も含まれる。多くの楽団のピンチを救ってくれたアクセルロッドには「全日本首席客演指揮者」の称号を贈りたくなるほどであった。
そのアクセルロッドが11月、ふたたび都響の指揮台に立つ。プログラムはシルヴェストロフの「沈黙の音楽」、シベリウスのヴァイオリン協奏曲、ショスタコーヴィチの交響曲第5番。ウクライナ、フィンランド、ロシアの作曲家が並んだ「地政学的な」プログラムとでも言えるだろうか。シルヴェストロフは現代ウクライナの作曲家。「沈黙の音楽」は2002年に弦楽合奏のために書かれた、淡いノスタルジーが漂う静謐な作品だ。シベリウスのヴァイオリン協奏曲では、2012年ハノーファー・ヨーゼフ・ヨアヒム国際ヴァイオリンコンクール優勝、第15回チャイコフスキー国際コンクール第3位のアレクサンドラ・コヌノヴァが独奏を務める。モルドヴァ出身の注目株。ショスタコーヴィチの交響曲第5番は、作曲者随一の人気作にして問題作。このプログラムで聴くからこその発見があるかもしれない。
なお、同一内容の公演が小田原三の丸ホールでも開催される。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2023年10月号より)
第986回 定期演奏会Cシリーズ
2023.11/12(日)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
東京都交響楽団 小田原公演 オーケストラ・キャラバン
11/13(月)18:30 小田原三の丸ホール
問:都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp