平野公崇(サクソフォン)

ホール20周年に、気心の知れた名演奏家が集う

(c)ノザワヒロミチ(CAPSULEOFFICE)

 幅広いフィールドで活躍する日本屈指のサクソフォン奏者・平野公崇。彼は、10月4日の「Hakuju Hall 20周年記念 ガラコンサート」に出演する。これは、平野の他に、小林美恵(ヴァイオリン)、川本嘉子(ヴィオラ)、長谷川陽子(チェロ)、大萩康司(ギター)、林美智子(メゾソプラノ)、三舩優子(ピアノ)と、計7名の人気演奏家が集う豪華なコンサート。各々が親しみやすい小品等を聴かせ、最後は全員で合奏するという興味津々の内容だ。

 今回の出演者は、10年に亘る「Hakuju 東日本大震災 チャリティコンサート」に出演してきた固定の顔ぶれだという。

 「発端は、このホールの支配人が、個々に主催公演に出ていたメンバーを集めて、食事会を開いてくれたこと。それが回を重ねる中で大震災が起きた。そこで我々も何かしなければと、チャリティコンサートを始め、普段取り上げない小品の演奏や変則編成ならではの合奏を行ってきました。今回はその歩みを聴けるコンサート。しかも皆円熟味を増しているので、脂が乗り切った演奏をお楽しみいただけます」

 平野自身は、J.C.バッハの四重奏曲 op.19-1を披露する。 

 「原曲は、フラウト・トラヴェルソ2本とヴィオラ、チェロの四重奏曲。今回はフルート・パートをソプラノ・サクソフォンとヴァイオリンで演奏します。曲は、モーツァルトがJ.C.バッハを手本にしていたことがよくわかる音楽。特に今回は、軽くて明るく爽やかな響きも魅力です」

 全員で演奏するのはサン=サーンスの「動物の謝肉祭」。これは平野の編曲だ。

 「誰がどのパートを受け持つかを考えるのが大変。林さんに『水族館』を歌ってもらったり、大萩さんに『カンガルー』を弾いてもらったり、贅沢過ぎる使い方をしていますね。キャラクターが違う曲が並んでいるので、この曲だからこの楽器なのか、この人だからこうなのかなど、興味深く聴いていただけると思います」

 メンバーについては、「全員演奏家として素晴らしい」のを前提にこう語る。

 「小林さんは精神的な支えで、川本さんは音楽家の象徴的存在。長谷川さんは細やかな気配りで支えてくださる方。大萩君は愛情溢れる優しさで包んでくれて、林さんは華であり、強い意志で牽引してくださる。三舩さんは気さくな人柄が魅力的です」

 それゆえ「人柄や人間味がアレンジのポイントになっている点も聴きどころ」だ。「最初から抜群だった響きが、時間を経てより熟成されているし、ドリーミーな別世界感がある」と平野も絶賛のHakuju Hallで行われる、まさに「ここでしか聴けない」コンサート。ぜひ体験してみたい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年9月号より)

Hakuju Hall 20周年記念 ガラコンサート
2023.10/4(水)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700
https://hakujuhall.jp