少年聖歌隊の伝統が残り、中世に遡る多様な音楽に対応できるア・カペラ男声集団が多い英国。結成10年に満たない現時点で世界的に注目を集めるジェズアルド・シックスも近現代曲解釈は絶品だが、ルネサンス期の自国作品への適性はやはり圧倒的!と再確認する新録音。2023年に歿後400年となるバードの作品を傑作「5声のミサ曲」を軸に厳選、6人の声は絶妙な距離感でそれぞれ体温を保ちつつ気色張らず枯れもせず、明らかに群を抜く確かさで多声の綾の面白さを驚くほど明快に解き明かしてゆく。自ずから姿を現す緻密な作品美。並居る名盤のどれとも違う気品、興味深く香り高く。
文:白沢達生
(ぶらあぼ2023年9月号より)
【information】
CD『バード:5声のミサ曲/ジェズアルド・シックス』
バード:5声のミサ曲、アヴェ・ヴェルム・コルプス、悲しみと不安が、預言者エレミアの哀歌 他
ジェズアルド・シックス
【ガイ・ジェームズ(カウンターテナー) ジョゼフ・ウィックス ジョシュ・クーター(以上テノール) マイケル・クラドック(バリトン) サミュエル・ミッチェル(バス) オワイン・パーク(バス/指揮)】
Hyperion/東京エムプラス
PCDA 68416 ¥3143(税込)