白石光隆 ピアノリサイタル Vol.36

ウィットに富んだ実力派によるこだわりのプログラム

(c)Shouhei Yokoyama

 誰もがよく知る名曲から、巨匠が残した知られざる秘曲まで、さまざまな作品の真価を捉え、等しく愛と光を注ぎ続けているピアニスト・白石光隆。発表されるアルバムもリサイタル・プログラムも、いつもお洒落で気の利いた選曲に心躍らされる。過度に湿度が高すぎず、それでいて人間味あふれる演奏は、聴き手の心をほぐし元気を与えてくれる。

 Vol.36を数える今回のリサイタルも、白石の冴えわたるセンスによって選ばれた、輝くような作品たちが並ぶ。序盤はプーランクとドビュッシーによる小品群の組み合わせ。バッハ=ブゾーニの「シャコンヌ」で内省的な世界へと導いたあとに、ユダヤ系アメリカ人の作曲家シェーンフィールドの小品集「小さな罪」を配置。心憎いほどチャーミングでポップ、なおかつ繊細で技巧的でもある本作を白石の演奏で聴けるのは幸せだ。甘美なチャイコフスキーと野生味あふれるボロディンによるロシアン・ワールドへの展開も楽しみである。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2023年9月号より)

2023.9/13(水)19:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677 
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