石橋史生 ピアノ・リサイタル

揺るぎなく積み重ねてきた誠実な音楽哲学

 東京藝術大学大学院、ミュンヘン国立音楽大学で研鑚を積んだ石橋史生は、ドイツを中心にヨーロッパで演奏・教育活動を展開。在欧中に高く評価されていた石橋の音楽哲学は、帰国後、定期的に開催している公演からもひしひしと伝わってくる。選曲構成はクラシック音楽の核から逸脱することなく、演奏スタイルも正統の極み。近年は鋭角なアウトラインに丸みがかかり、それでいて根底には正統な音楽言語がある。素材で勝負の如く混じりっけのない石橋の表現からは、“変わらないもの、変えてはいけないもの”を気づかされる。

 今回はまず、J.S.バッハ「シンフォニア」。ピアノのお稽古の曲集と侮るなかれ。バッハが説く「カンタービレの美しさと知性」が求められる15曲である。そしてブラームス最後のピアノ曲、3つの間奏曲とラプソディから成る枯淡の美を持つ曲集op.119。初期ロマン派の巨匠、シューベルトの天才ぶりが分かるピアノ・ソナタ第7番と「楽興の時」など、石橋節を堪能したい。
文:上田弘子
(ぶらあぼ2023年7月号より)

2023.7/14(金)19:00 東京文化会館(小)
問 プロアルテムジケ03-3943-6677
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